歴史の非連続な局面を探し出すのも一種の才能だ。

役小角(えんのおずぬ)。渋い選択である。
大化の改新前に生まれた呪術師で、作者の作品とは矛盾しない。
歴史には「何故だろう?」と思わせる場面が多々あり、それを全て役小角の遺物の仕業とすれば、何となくストンと収まる算段。ある意味、作者の作戦勝ちである。
とは言うものの、それを短編連作集にまて昇華させうるか否かは須く作者の力量に拠る。
平たく言えば、ストーリーテラーとしての資質は十分だと思う。
ありきたりの展開と後ろ指を指す読者もいようが、私は「楽しめるから良いんじゃないの?」と思った。