魔法使いとヴァンパイア

片桐桃葉

一章

プロローグ

『おめでとう御座います、草間葉月さん。貴方は異世界精鋭パーティーメンバーに選ばれました。詳しくは以下のURLにて説明させていただきます。』

いまさっき届いたばかりのメールを開くと、そこにはそう書いてあった。

「やったぁぁあ!!」

嬉しさのあまり、俺は歓声をあげた。


「URLを開けば良いのか。」

ポチッとな。

画面のそれを開き、無意識にふと瞬きをした。


目を開けた俺は、見たこともない場所に立っていた。

場所だけではなく、見たこともない女の子が目の前に、側に立っていた。

「え…。え、えええ!何処何処!ここ何処!!」

いきなりの事に俺は驚きを隠せず、女の子がいるにも関わらず変なリアクションをとってしまう。

彼女はクスクス、と微笑ましそうにしていた。

俺はふと、メールの内容を思い出す。

頭を過ぎったのはどことなく怪しい『異世界』の文字。

もしかしたらここは異世界なのかもしれない、と俺は判断した。


「ようこそ、ファンタジスタの国へ。草間葉月さん。お待ちしてました。」


目の前には少し年上位であろう優雅な金髪の少女が。


―笑顔でこちらを向いていた。


           ★★★


事の始まりは丁度1週間前だろうか。

夏休み、課題を放ったらかして趣味であるゲームに時間と労力を費やしていた。

何せ一日中自由に何をすることも許される夏休みだ。

普段は勉強に付いてくのに必死でロクにゲームをする余裕もない。

なら夏休みくらいはオールしてゲームをしまくってもいいじゃないか。そう思い、夏休みが始まってからはや三週間はずっとゲームをしていた。

そんなある日のこと、まるで小学生のように夢中になってパソコンのオンラインゲーを極めていたときだ。

画面の上に通知が来た。

なんだろう、と通知画面を開くとその正体は一通のメール。

内容が気になった俺は宛先も見ずにせっせとメールを開く。


それこそが全ての始まりであると…その時の俺は気づくはずもなかった。

「…」


…メールの内容はこうだ。

 異世界精鋭パーティーのメンバーを募集中です!

 ゲームに腕のある皆さん、奮ってご応募下さい!

 以上のことにご応募頂いた皆様には先行特典として上級職に着くことが許されます。


いかにも怪しげなメールではあったが腕試しに、と思って応募したのだ。

「なんだ、こんな美味しい話。当選したらすごそうだけど。」

まぁ半信半疑ではあったけど。


           ★★★


「ようこそ、ファンタジスタの国へ。」

少女は笑顔でそう言い放った。

「えーっと。これは一体…。というか貴方誰?」

戸惑いながらも、俺は少女に問いかける。

「自己紹介がまだでしたね。私めの名はフリルと申します。対魔黒軍ギルドの職員で、『異世界精鋭パーティー』メンバー募集企画の担当をしています。」

フリルと名乗った少女は俺の顔色を伺いながら話を続けようと…したのを俺が遮った。

いや、これツッコミどころが多すぎるんだが。

「あの、フリルさん。」

「私のことは呼び捨てにして結構です。」

「あ、はい。なんで俺ファンタジスタの国?に居るの。日本にいたはずなんですが!しかも自分の部屋にいたはずなんですが!」

軽く焦ったような口調になりながらも、内面落ち着きながらフリルに質問を飛ばしていく。

「なんで、って言われましても。異世界精鋭パーティーですから。そりゃ異世界の強き人々を精鋭として扱い、我が国へ優遇しいずれ魔黒軍を倒してもらうために…。」

「いやあの、そんな細かい説明メールになかったんですが!」

「異世界って書いたので分かるって下さると思いまして…省きましたっ!」

フリルは笑顔でそう答えた。

「…」

予想外の答えに言葉も出ない。

これはあれだ。一見なんでもできる人に見えて実は重要なこと抜かすややこしいタイプの人だ。

今までのやりとりで俺はフリルをそう認識したのだった。

他のことは、アニメやらゲームが好きで詳しかった俺にはある程度のことは理解出来たのであえて聞かないことにした。

でもひとつだけ気になったので。

「これって、日本に帰れないパターンですよね。」

「それは当たり前です。異世界の召喚ルートも一方通行なんです。」

これまた笑顔で答えるフリル。

“帰れない”と聞き少しショックではあったが。

異世界では美少女が多いと言われてるし、ここで暮らすのも悪くないと思えてきた。


ギルド職員の説明不足によるまさかの異世界召喚。

こんなことがあっていいのだろうか。


そんなこんなで、俺の第二の人生。

―異世界生活が幕を開けた。

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