二人にしか使えない、月の魔法

 高校生よりもさらに幼く、世間知らずで、自分の意思と周囲の意向の狭間に揺れる中学三年の少年少女たちの、不器用で大きな一歩を描いた作品です。
 祈りのプロローグに始まり、ゆっくりと変わりゆく日常での心情を描いた前半、幻想と発露の後半と、物語の表情がくるくると変わり、それでいてテーマがぶれずに貫かれているのがいい。メインはユウトとミヤコだけど、シエラも二人を際立たせる、いい役割を果たしている。熱くはないけれど、幼くまっすぐな三人の思いが胸にくる作品だと思います。