紫陽花 お遊び分

【前書き】


診断メーカー「スキンシップしてほしい二人へのお題」より紫陽花前半部分時点

https://shindanmaker.com/203181


「カザリアとロウリエへのお題は『横抱きの体勢で膝に座る』です。『真剣な表情で描く』に挑戦すると吉」


 ……というのを先日書いたのですが、もしかしなくても本編後ならただのばかっぷるが爆誕するんじゃと思って並べてみました。

 オチは、もちろん、ない…!です。


***


【前半部分の二人の場合】


「え、何、この状況」


 朝、目が覚めると、毛布に包まれてロウリィに横抱きにされていた。

 そろりと顔をあげれば、ロウリィがこくりこくりと船を漕いでいる。

 焦る気持ちのまま抜け出そうと試みて、ロウリィの寝着を握りしめていたことに私はようやく気づいた。

 もしかしなくてもロウリィが起きようとしたところを、私が邪魔してしまったのかもしれない。

 起こしてくれればいいのに、と思う。

 今日は早起きしなくてもよかったのだろうか。

 ぬくぬくとここちのよい温度に身を委ねる。

 すぅすぅと聞こえる寝息を聞いていたら、私までまた眠くなってくる。

 あぁ、それにしても、と私は毛布越しにロウリィの胸へくっついた。

 この人、本当にふわふわだわ。



***


【本編後の二人の場合】


「え、何、この既視感」


 朝、目が覚めると、毛布に包まれてロウリィに横抱きにされていた。

 そろりと顔をあげれば、ロウリィがこくりこくりと船を漕いでいる。

 どうやらまたロウリィが起きるのを邪魔したらしい。抱えられるままロウリィの肩に頭を預けて、私はそろりと毛布から手を出した。

 眠るロウリィのまるい頬に手を伸ばす。

「ふふ。かわいい」

 やわらかな頬をさするとロウリィはむず痒そうに呻いた。

 春になったといってもまだ寒いこの土地では、残念ながらロウリィより早く起きられない。

 久しぶりに明るい朝日のもとで見るロウリィの寝顔はとてもお得感があった。

 夏になったら——せめてもう少し早く起きられるようになったら、ロウリィの寝顔を毎朝堪能できるかもしれないと、なんだか今からうきうきした気分になる。

「何……しているんです?」

 そろりと眠たそうに開いた蒼色の双眸に見つめられ、私は息を詰めた。

 頬に寄せていた手を逆に取られて、すりと頬擦りされる。驚いてロウリィの膝から落ちそうになった私は、毛布ごと抱え込み直されあっけなく引き戻された。

「おはようございます?」

「……起きていたの?」

「二度寝してしまう直前でした。阻止してくれて、助かりました」

「前にも思ったけど、起こしてくれたらいいのに」

「急ぎの用事はないですし、カザリアさんが離してくれなかったので?」

「……言い方!」

「嘘はついていないです」

 ね、とロウリィは、彼にしがみついていたのだろう私の手の内に口を寄せた。思わず手を握り込んでしまえば、そのまま手を引かれて、頬に、髪に口付けられる。

「……ろ、ロウリィ」

「何?」

「……」

 恥ずかしくなって私はロウリィの胸をぽかりと叩いた。額をロウリィの肩にぎゅうと押し付け、しかめ面を隠す。

 熱を帯びた私の耳殻をロウリィが指先でやわらかになぞった。

「ほら。やっぱりカザリアさんのほうが、よっぽどかわいいですよ」

 しっかり聞こえていたらしい。

 つい逃げてしまった私を許容して、笑ったロウリィの声はひどく愛おしさに満ちいてた。

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