第十四話 青春ラブコメ部結成! 後編

 まずは久瀬君を誘おうかと思い、登校して席に着いた僕はラノベを読む振りをして久瀬君達のグループをチラチラと様子を窺った。

 しかし、何やら盛り上がっているようで、久瀬君は近付く気配はなかった。


「疲れたわーマジ疲れたわー」


「サッカー大変だな」


「うっわめっちゃ他人事!? ねぎらいの言葉の一つくれたっていいっしょ?」


「翔太はいつも元気だから、疲れたように見えねぇからな」


「ショータは体力だけ自信あるからね。体力バカ?」


「体力無かったらサッカーとかマジ無理だから?」


「翔太の事なんかどうでもいいけどさー、大輝のバイト先……夏休みんときとかいい?」


「夏休み? 別に構わないけど……」


「ん、じゃあよろ」


「夏休みにバイトとか怠くない? あ、そっかそういうことね」


「何? どゆこと? 亜未?」


「いえいえ、べっつにー」


「え~みんなで海って話はどうしたんよ?」


「海? いつそんな話したんだ?」


「ばっかお前、夏休みといったら海だろ? 水着だろ? ナンパだろ?」


「うわーショータさいてー。ナンパとかマジ無理」


「ちょっとあんた、大輝がそんな事するわけ無いっしょ? バカなの?」


「うっ、なぜ俺が責められてんだ??」


 いつものリア充メンバーは既に夏休みの予定について話し合っていた。何だか気が早すぎるけど。それにしても海か。一度も行ったことないな……海。友達がいない僕には海より市民プールの方がお似合いだろうな。一人で市民プールもそれはそれで虚しく、行かないけど。

 あ、部活が設立するんだったら夏休みとかどうするんだろう。桜小路さんと海……水着見たいな…………って、海に誘われる事なんて絶対にないし、水着を拝める日は一生無いだろうけど。はぁ~海行きたいな。

 それにしても久瀬君達の会話って途切れることがないな。これが噂で聞くリア充の中身のない会話。このままだと久瀬君に話をするのは当分無理そうだな。

 僕は一度諦めてラノベの続きを読み始めた。



 それから昼休み、久瀬君達は学食へ向かったため話しかけるタイミングを逃した僕は、一人教室でお昼にしようと考えた所で、ふと脳裏に部室の事を思い出す。まだ仮として用意されているけど、でも一応オタク部の部室である。そこに所属している僕は出入りすることもできる。

 ということは今度から部室で一人お昼を食べる事だってできる。

 なんて素晴らしい! 部室にはそういう使い方もあるんだ! あ、でも鍵はどうするんだろう。う~ん、一応行ってみて開いてなかったら諦めよう。

 教室を出た僕はコンビニで買ってきたおにぎりと飲み物が入った袋を持って、部室へ足を運んだ。今日も購買じゃなくコンビニである。


「ユッキ―、どこ行くの?」


 途中で僕のあだ名が呼ばれる。その名で呼ぶのは一人しかいない。

 振り返ると弁当箱を持ったモモっちが立っていた。


「モモっち。えっと部室で食べようと思って」


「部室? ユッキーって何か部活に入ってたっけ?」


「最近入ったんだよ。あ、ちょうどモモっちにも訊こうと思ったんだけど」


 久瀬君に話をする予定が先にモモっちから話すことになった。いずれ誘う予定だったから順番は関係なかったけど、でも女子を部活に誘うのはちょっと恥ずかしかった。


「ぼ、僕と一緒に部活に入らない?」


「部活に? それって乱交サークル的な?」


「そんないかがわしい部活じゃないよ!?」


「う~ん、となると私をオタサーの姫としてキモオタに崇められるけど、最終的にはみんなの性処理道具として汚されろって事?」


「どうしてそういう方向に行くんだよ……」


 オタクが集まる部活って意味なら確かにそうだけど、なぜエロゲのようなシチュエーションになるの?

 それにしてもキモオタって……否定はしないけど。


「オタクの部活というのはそうなんだけど……一応表向きは文芸部って事になってる。星道高校に文芸部って無かったみたいだから新しく設立して現在部員を探してるんだ。あと二人必要で……それで、も、もしモモっちが良かったらって思ったんだけど……どうかな?」


「私オタクじゃないよ?」


「それは構わないよ」


「う~ん……ユッキ―以外に誰かいるの?」


「えっと……さ、桜小路さんが」


「学校のアイドル。もしかして桜小路綺音もオタクって事なの? そうでなければユッキ―が部活作ったりするはず無いもんね」


 情けない事にモモっちの言うとおりだ。反論のしようがなかった。


「無理なら断っても――」


「入る」


「え?」


「そのオタクの部活? 私も入るって言ったの。……このままだと桜小路綺音に捕られちゃうし」

「何が捕られるの?」


「ユッキ―そこは聞き取らなくっても良いんだからね?」


 何だかよく分からないけど、モモっちが入ってくれた! 残る部員は一人。

 部室へ向かった僕たち。もし開いてなかった場合は別の場所でお昼を済ませようと考え、ドアに手を掛けると、抵抗なく開けられた。もしかすると中に桜小路さんがいるのかもしれない。モモっちの入部報告もできるから、それは助かる。


「あ! 露木く…………」


 中へ入ると桜小路さんが満面な笑みを浮かべたまま、表情が固まっていた。多分だけど僕の後ろにいるモモっちがいることが原因だと思うのだけど……。何かまずかったかな。


「あの桜小路さんに報告したいんですけど」


「露木君の……か、彼女?」


「え!? ち、ちが――」


「は~い! 私がユッキ―の彼女の西崎桃香だよ~。よろ!」


「も、モモっち! か、彼女とか……僕のようなミジンコとなんておかしいし、それにモモっちの名に傷がつくから冗談でも、そんな事を言ったらダメだよ」


「あ~はいはい、いつものネガティブユッキ―ね。もうちょっと嬉しそうにしてもいいのにな」


「あ、あはは、そうよね? 露木君に彼女なんかできるはずがないよね? えっと、西崎さん……ですよね? えっと私は露木君の”親友”の桜小路綺音です」


 さらっと桜小路さんが酷い事を言ったような気がするけど、気にしない。

 あとなぜ”親友”を強調する言い方をしているんだろうか。いつ僕と桜小路さんが親友になったんだろう。そう言ってくれて嬉しいけど、追求すると睨まれそうだから何も言わない……。だって僕の方に視線を向けて、「私達って親友だからね?」って笑顔なのに、どす黒いオーラが見えるし。


「ふーん? それじゃあ私とユッキ―は深い絆で結ばれた……そうねセフレね」


「ち、違います!? あの桜小路さん、モモっちが部活に入ってくれるみたいで、本当は放課後に報告する予定だったんだけど、ちょうど桜小路さんが部室にいたので」


「西崎さんが?」


「ま、そゆこと。改めてよろよろ」


 桜小路さんの顔は歓迎してなさそうだけど、やっぱり桜小路さんとモモっちを会わせるのはまずかったんだろうか。


「…………分かったわ。こちらこそよろしくね。それで露木君が部室に来たのは昼食を摂るからよね?」


「あ、うん。教室じゃあちょっと気まずいというか……今まで気にしてなかったんだけど」


 教室でお昼を食べる人は少ないから特に気にするほどでもなかった。それでもぼっち飯はどうしても目立ってしまう。中には女子のグループでひそひそと、明らかに僕に対して嘲笑うような会話をされた事がある。他にはオタクグループからぼっちについて見解、これも僕に対して馬鹿にするような会話をされた事がある。いずれも1年の時の話で、2年に進学してからはなかったはず……。

 それで新しくできた部室ならぼっち飯を気にする必要もないからと訪れたのが理由だった。


「露木君の話は分かりました。私も露木君とお昼をご一緒できればと思っていましたし、これからは部室でお昼を一緒にしましょう。それで西崎さんは……西崎さんも露木君とお昼をご一緒にする、でいいのかしら?」


「そんな感じだね」


 一旦落ち着いて、僕は桜小路さんの対面に座り、僕の隣にモモっちが座る。桜小路さんが何か言いたそうな顔をしていたが、結局何も言わずに弁当を広げた。同様にモモっちも弁当を広げて僕はコンビニで買ったおにぎりを手に包装を解く。


「露木君っていつもコンビニで買ってきてるの?」


「基本的にコンビニ、気分で購買で買うことがあるかな。学食は人が多く、ぼっちじゃあ食べる場所がないし」


 さらっと零したぼっちネタになぜか二人は申し訳なさそうに顔を伏せた。それはそれで余計に僕が惨めになるから、受け流して欲しかったんだけど……。

 僕は二人の弁当箱に視線を向ける。確かモモっちは自分で作っていると言ってたけど、もしや桜小路さんも同じなのだろうか?

 中身はサンドウィッチで具は目視では、卵サンドやツナサンド、BLTサンドって所だろうか。色鮮やかで見てるだけで涎が垂れそうだった。これでは物欲しそうに見ているようだ。僕は桜小路さんの弁当箱から視線を逸らすと、視界の端で桜小路さんが僕の事をジーと見ていたことに気付いた。もしや弁当箱を凝視していた事に気づかれた?


「露木君、ラブコメではヒロインが自分の弁当のおかずを主人公に食べさせるシーンってあるわよね?」


「え? そう、だったかな? 恋人になってからだと分かるけど、それにそういうシーンがあるのって主人公に近しい存在――幼馴染みとか妹がするシチュだと思うけど……そ、それがどうしたの?」


 桜小路さんの手にBLTサンドを持ち、それを僕の口元へ近付かせた。ってなぜ!?


「あ、あの??」


「露木君が私のサンドウィッチを物欲しそうに見てたから……」


「学校のアイドルがそんな事するんだ」


「別に私は学校のアイドルになったつもりはないわよ。みんなが勝手に言ってるだけ。それに私が誰に何をしようが西崎さんには関係無いわよね?」


「ま、そうだね。ちなみに私はユッキ―とあ~んした仲で、間接キスまでしちゃったんだよね~。ユッキ―は初めてらしいんだけど」


「……ビッチ」


「ふふ、猫の皮を被った腹黒アイドル」


 二人の間にバチバチと火花が飛び散っているように見えた。僕は飛び火が掛からないように影を薄くしておにぎりを咀嚼した。あ、桜小路さんのサントウィッチ食べたかったかも。でも今はそんな事を言える雰囲気じゃなかった。

 それにしても、このラブコメ感は一体何だろう。僕ってモブキャラのはずなのにおかしいよね?



 久瀬君がいつものメンバーと別れたあと、僕の席へ近づいて来た。どうやらやっと機会が訪れたようだ。


「あー露木? お前ずっと俺たちの方見てただろ? 翔太はアホだから気付かないだろうけど、玲菜と亜未は絶対に気付いてたぞ? 何言って来るか俺知らんぞ?」


「……ぼ、僕絞められる!?」


「いや、そんな事する奴らじゃないし。玲菜は知らんけど」


「とうとう僕にも虐め問題が……」


「玲菜もそこまで酷い事はしないと思うが……まあその時は俺が一言いってやるよ」


「これがイケメンリア充の気遣い……どんな女子でも俺のテクでイチコロだぜ! って事だよね?」


「お前、俺をどういう目で見てんだよ……。それで俺に何か話したいことあるんじゃないのか?」


「あ、うん。桜小路さんが部活作ったんだけど、あと部員が一人必要なんだ。だから久瀬君が入ってくれないかなって思って……どうかな?」


「部活? それって何部なの?」


「オタク部」


「よくその名前で部活申請通ったな」


「いや、表向きは文芸部でその実体はオタクによる部活なんだ」


「あー、まあそりゃーそうだよな。で、部員は三人必要って事か?」


「ううん四人必要なんだ。一人は入ってくれたから、あとは久瀬君だけ」


「俺が入ること前提で話してないか?」


「久瀬君が入ってくれなかったら……もう候補者がいないんだよ」


「……取りあえず、その一人入ったていうのは誰なんだ?」


「モモっちだよ」


「誰だよ……」


「あ、えっと西崎さん」


「西崎? 確かA組の西崎だよな。なぜ露木が西崎をあだ名で呼んでるんだ? そんなに仲良かったか?」


「ぼ、僕だって最初は呼びにくかったけど、モモっちがどうしてもって聞いてくれなくって……今じゃあモモっちって呼び名も慣れたけどさ」


「ふーん、西崎もオタクなのか」


「ううん、モモっちはオタクじゃないよ。事情を話したら入ってくれてさ」


 実際、モモっちが入ってくれるとは思ってなかったから少し驚いたけど。


「オタク部なのにオタクじゃない人が入ってる時点でオタク部じゃなくね? しかも俺も別にオタクじゃないし。まあ桜小路は露木と話せる場所が欲しくって部活作ったんだろうけど。別に入っても良いけど、幽霊部員扱いでいいんだよな?」


「部長は桜小路さんだから、それは聞いてみないと分からないかな」


 何か特別な活動をするわけじゃないだろうし、幽霊部員でも構わないと思うけど……僕が勝手に決められないからな。


「……それにしても露木成長してね?」


「成長? どういう意味?」


「桜小路に西崎、あと名前は知らないけど他クラスの女子、短期間で露木に近寄ってくるなんてモテ期到来ってか?」


「それは違うと思うけど……ただぼっちの僕を同情して話しかけてきてくれてるんだよ。みんな優しいよ」


「そんな事ねーと思うけどな。自分をモブだって言ってるが、立派に主人公してるんじゃねぇか? 少なくとも俺よりは彼女ができる可能性もあるじゃんか」


「それは僕に対する嫌みか何かかな……。僕に彼女なんかできるはずがないよ。誰がぼっちでコミュ障の僕を彼氏にしたいて思う? 彼氏にしたいなら久瀬君のような人を選ぶでしょ。はぁ~イケメンリア充とか爆発しろよ」


「……まずはその卑屈な性格をどうにかしないと、彼女は無理そうだな。それで俺は一応部室に顔出せばいいのか? 入部届だけ書いたら俺は帰るぞ」


「あ、うん。それは桜小路さんが良ければだけど」


 久瀬君が部活に入部すると決まって、僕たちは文芸部――もといオタク部の部室へ向かった。

 扉を引くと、既に桜小路さんとモモっちがいた。しかも中の空気は何だかピリピリしてて、入りづらい。最初に顔を合わせたときもそうだけど、二人の相性ってとてつもなく最悪だよね。どうしてだろう。考えても理由が見つからない。

 僕が中に入るのを躊躇していると、久瀬君が「どした?」と不思議に思って中を覗いた。すると久瀬君は微妙な表情をして「帰っていいか?」と聞いてきた。うん、僕も帰りたいよ。


「あ、露木君!」


 出入り口付近で立ち往生していると、桜小路さんが僕を見た瞬間、さっきまで眉間に皺を寄せていた顔が瞬時に笑顔で出迎えてくれる。二人の間に一体何があったのか聞きたかったけど、やぶ蛇だから訊かないことにした。

 僕は中へ入ると、続いて久瀬君も中へ入る。当然、桜小路さんもモモっちも久瀬君に訝しげな顔を向けている。


「何だろう……俺って歓迎されて無さそうなんだけど」


「そんな事無いよ! これで正式に部活として設立できるから歓迎だよ! それで桜小路さん、久瀬君が四人目のメンバーとして入部することになったよ!」


「まあ幽霊部員って事なら別に入ってもいいよ。他に部活入る気もないし」


「それは助かりました久瀬さん。この入部届に名前を記入したあとはもう帰ってよろしいので」


「うわー私、イケメンって嫌いなのよね。あのモテて当然ですけど? っていう態度はもうダメ。早く視界から消えてくれないかな」


「…………」


「ふ、二人ともツンデレなんだよ! 本当は歓迎しているはずだからね!」


 どうして二人ともイケメンに辛辣なのだろうか?


「ま、名前だけだし、別に俺は顔に出さなくてもいいんだよな?」


 久瀬君が桜小路さんから受け取った入部届のプリントに自分の名前を記入すると、それを桜小路さんに手渡そうとする。


「何を言ってるのかしら久瀬さん、入部したからにはちゃんと活動して貰いますよ?」


「は? 活動って一体何をするんだ?」


 久瀬君がポカンとした顔をしている隙に、桜小路さんが久瀬君から入部届を回収した。その様子に久瀬君は顔を引き攣らせた。


「文芸部とは仮の名、本当の名はオタク部! 何ですが、それだけだとちょっと物足りない感があったので今まで考えていたのです。オタク同士が語り合う場として活動するかどうか。そして、さっき私の中で思いついたのです」


 一拍置いて桜小路さんが次の言葉を発するのを僕たちは静かに待っていた。

 桜小路さんが普段見せない不敵な笑みを浮かべて、言葉を放った。


「この部活の真の目的を青春ラブコメをするという部活にしました! オタク部改め、青春ラブコメ部です!」


「青春ラブコメ部?」


「何そのキモオタ部って?」


 僕の疑問にモモっちの身も蓋もない言葉。


「青春ラブコメ部です! 主な部活内容はラノベのような青春ラブコメを実際に私達が行うというのが目的なんです。ほらオタクって友達がいないし、ぼっちで青春なんて謳歌できないじゃないですか? ちなみにソースは私です」


「あ、僕もそうですね」


「「被虐ネタはやめろよ……」」


 久瀬君とモモっちの声がハモる。

 ふと僕は桜小路さんの言葉の違和感に疑問符が浮かんだ。


「ちょっと待って下さい。僕は今までに友達がいなかったし、ぼっちだったけど、桜小路さんは違うのでは?」


「露木君に話したと思いますが、私は心から友達と言える人は今までにいませんでした。確かに話しかけてくれる方はいますが、私が求めている友達とは少し異なります」


「ふ~ん、取り巻きって事ね。アイドルも大変そうなんだね」


 ももっちが興味なさそうに呟いた。

 確かにそれは友達と言うには怪しい。


「とにもかくにも、これでようやく青春ラブコメ部が設立し、ラノベではここから物語がスタートする場面ですよ!」


 本来なら部活が設立し、ようやくメンバーが揃って物語がスタートというのが、ラノベでは良くある事だ。

 僕は何だか桜小路さんの言葉を聞いて、高揚感で胸がドキドキと鳴っていた。


「終盤に差し掛かってる場面じゃねぇか?」


「で、私はその茶番劇に付き合わされる訳なの?」


「茶番劇ではありません! これだからリア充はダメダメなんですよ」


 桜小路さんがわざとらしく溜息を吐いて、リア充をディスる。即ち、モモっちと久瀬君を。


「はぁ~……それで青春ラブコメ部だっけ? 俺は幽霊部員ってことにしてくれないのか?」


「入部するからにはちゃんと活動して貰います」


「なら俺は部活に入らないぞ?」


「それは露木君を裏切るということ?」


「いやいや裏切るとかそんな話じゃなく――」


「く、久瀬君がやめると他に候補者が……」


「…………」


 僕は久瀬君に入って欲しいと思っていた。けど嫌がっているのなら無理強いができない。


「どうしますか久瀬さん?」


「……はぁ~分かったよ。入るよ」


「では決まりですね!」


 僕は久瀬君の言葉に喜んだ。

 これで四人目が決まり、無事部活が結成することができた。

 僕は改めて部室内とメンバーをそれぞれ見渡した。僕の日常にはない全く新しい日常がこれから始まろうとしている。ぼっちだった僕として嬉しく、これからの学校生活が楽しみになってきた。

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