奇談その二十四 夫の異変その二

 夫の異変に気づいたのは先月の中頃だった。


 不安になった私は夫を説得して総合病院に連れて行き、精密検査を受けさせた。


 ところがどこにも異常はなく、夫は健康そのもので、年齢に比べてどこも若々しいと担当医に感心された程だった。


 そのせいなのだろうか。


 私は間違いなく夫の食べたシチューに毒を入れた。しかし、夫はそれを美味しそうに食べたばかりか、お代わりまでした。


 毒が入っていないのかと思い、飼い犬に残りを食べさせると、ほんの数秒で息絶えた。


 毒はダメだと思った私は、夫愛用の猟銃で頭を撃ち抜いた。夫はそのまま後ろに倒れて動かなくなった。


 完全に殺せたと思い、風呂に入って身体を洗っていると、夕飯はまだかと浴室のドアを開けて怒鳴り込んできた。


 次は確実に仕留めようと考え、居間のソファでうたた寝をしている夫の喉を切り裂き、心臓が止まるのを確認した上で、血まみれになった手を洗うためにもう一度風呂に入った。


 そして、湯上りに水分補給をしようとキッチンに行くと、何故俺が風呂に入る前にお湯を抜いてしまったんだと顔を真っ赤にして夫が文句を言ってきた。


 肉体が残っていると生き返ってしまうのかも知れないと考えた私は、次に風呂から上がった夫にガソリンを浴びせて火を放ち、跡形もなく焼き殺した。


 今度こそ生き返らないだろうと思ったので、私は寝室に行き、ぐっすりと眠った。


 ところが、翌朝目を覚ますと、隣のベッドでいつの間にか夫がイビキを掻いて寝ていた。


 例えようもない怒りを感じた私は、夫の首をネクタイで絞めて殺し、寝袋に入れると引きずって車まで運び、遠くの海まで行って崖から落とした。


 すぐに車に戻って私は来た道とは違う経路を辿って家に帰った。だが、俺の車を勝手に乗り出してどういうつもりだと鬼の形相の夫が玄関に仁王立ちで待っていた。


 私は笑いが止まらなくなった。何がどうなっているのか理解できなかったからだ。


 夫はどうして死なないのだろうか? いや、どうして生き返ってしまうのだろうか?


 いくら考えてもわからない。


 もしかすると、私の方がおかしくなってしまったのかも知れない。


 明日、病院へ行って、精密検査を受けてみようと思った。


 


 

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