旅立ち

第6話 マジックアイテム

始まりの洞窟を抜け、村へ向かうハツキとヒジリの姿。

夜が明け、朝になっていた。


「はぁー。なんか長い時間、洞窟に居た気がする。ツカレタ・・・」


ぐったりと肩を落としハツキが呟く。


「こんな良い天気で太陽も気持ちがいいのにそんな顔して歩かないの!

お天道様に叱られるわよ」


姉かよ!ハツキはそう思ったが面倒くさくなりそうなので止めた。

それよりその気持ち良さがわからないのである。


「代償か・・・」


・・・ 《代償》  感覚及び痛覚  ・・・


ふと、頭を過る。

感覚に暖かさも寒さも含まれるのか。

感覚神経が機能していない時点で、

温度が感じられないだろう。


「どうしたのハツキ?」

「いや、ホント気持ちが良いな~と思ってさ。」


さっき会ったばかりの少女に代償を教える必要も無い。

代償の話をしたら、能力の話にもきっとなるはずだ。

まだ仲間だとは思っていない。


「あの~、ヒジリさん」

「ヒジリでいいわよ。何ならお姉ちゃんって呼んでもいいわよ♪」

「わかった。ヒジリはなんで旅なんてしているの?」

「え~とね。探している人と モノ・・があるの。その為に強くならなくちゃと思ってね」

「そうなんだ。見つかりそうなの?」

「一つは解決、一つはまだかな」

「ふ~ん。見つかるといいね」

「ふふ。そうね」


そんな当たり障りの無い質問をしつつ二人は歩いていた。


ふと、ヒジリはハツキの腰にある白の皮袋に目が行った。


「ハツキ、その皮袋ってさ?」

「これはお父さんの《形見》なんだ。」

大事そうにハツキは皮袋を撫でる。


「そうなのね。。。それって 真珠龍の皮袋パールドラゴンのレザーポーチよね?」

「えっ!?」

「え!???」

ハツキは吃驚してヒジリの方を振り向く。

それに驚きヒジリは足を止めた。


「もしかしてわからないで使ってたの?レア度Sのマジックアイテムよ」

「う、うん・・・」

「まさか、あたしが借りてる 微風の外套エア・オーバーコートは知ってたわよね?」

「え!?」

はぁ~。ヒジリは溜息を付く。この外套だってレア度Aクラスなのに。


「それって凄いの?効果は??」

ハツキは目を輝かせヒジリに近付く。


「わかった。そこの木陰で少し休憩しながら説明するわ。」


太陽が高い位置まで上っている。

気温が上昇していたのでちょうど良かった。

しかしヒジリは違和感を感じる。

(このコ、暑さを感じないのかしら。結構暑くなって来てるのに)


「ココなら涼しいわね」

「う、うん。そうだね。それより教えて!教えて!」


「まずは 真珠龍の皮袋パールドラゴンのレザーポーチからね。

”討伐ランク:幻A”真珠龍からレアドロップ《真珠龍の逆鱗》を72時間以内に

”鍛治レベル:A”鍛冶屋の釜で168時間かけて加工してもらう。その後、10時間以内に

”錬金レベル:S”錬金術師に336時間、”寝ずに”錬金してもらってやっと出来るものなのよ」


そして出来上がるのが・・・




真珠龍の皮袋パールドラゴンのレザーポーチ:マジックアイテム~


レア度:S

効果 :アイテムを皮袋の中で縮小し、保管。

    食べ物・飲み物はそのままの状態で永久保存可能。

    欲しい物をイメージしながら手を入れればその手に収める事が可能。

    持ち主以外取り出し不可能な保管場所の作成。


「今、分かってる効果はこんなものね。所持者が少ないから余り解明されてないのもあるんだけどね」

ふむふむ、と無邪気な顔でヒジリを見つめるハツキ。

「すっごいアイテムだったんだね!さすがお父さん♪次は次は?」


ヒジリはハツキの顔を見れなかった。

腰に巻かれている外套を指で触りながら話始める。


「この 微風の外套エア・オーバーコートはね。


”討伐ランク:A” 風追いの鷹ウィンド・ホークのドロップ《風斬りの尾翼》を

”防具レベル:A”防具屋で仕立ててもらい。その後、止まない風の場所で30時間、

風を当て続けて稀に出来上がるのがこの外套ね。




微風の外套エア・オーバーコート:マジックアイテム~


レア度:A

効果 : 装備者に合わせてサイズ変更可能。

     風を体に纏わせ、装備者の身軽さを上げる。

     装備者の炎系の攻撃が上昇。

     装備者への炎系の攻撃を軽減。


「まぁ、こんなものね。どちらもなかなかお目にかかれない代物よ」

「すっごいアイテムだったんだね!」

皮袋と外套を交互に愛おしそうにハツキは見る。


「大切に使うのよ」

「そうだね!形見だもん!大事に使うさ」


「そろそろ行こう。もう少しで村に着くからさ!」

「そうね。行きましょう。変な人たちも集まってきてるしね」

「ヒジリも気付いてたんだ。」

「もちろん。こんなレアアイテム持ってるんだもの、いつも大変だったんじゃない?」

「あはは。やっぱり~?なんでいつも知らない人に襲われるのか不思議でしょうがなかったんだ」


ハツキの足元に錆びた鏃の矢が刺さる。

それより先にヒジリはハツキを抱え後方に移動していた。


「え!?なにがあったの?」

「なにもしてないわよ。ただあなたを抱えて避けただけ。」

優しくて柔らかい、天使のような顔でヒジリは微笑んだ。

ハツキは父を思い出した。優しく包み込んでくれる笑顔。

「そこで待ってて。すぐに終わるから。」

そう言うと共にヒジリの姿は遥か前方に移動していた。


「あんたら、なにしてくれんの?あたしのカワイイコにさ。

今ならまだ許してあげるからどこかにお行きなさい。」


ヒジリは男に囲まれてる状態でそう言った。


「コイツ馬鹿か?この状態がわかってねーんだな!それはこっちの台詞だぞ。

今なら許してやるからさっきのガキから袋持って、その外套を寄越せ。

そして黙ってそこで股開けや」


5人組の荒くれ者どもがニヤニヤしながらヒジリを取り囲む。


「はぁ~~。疲れるなぁ~。今度からこう言うヤツらとは交渉しない。

有無を言わさず倒す。ハツキから見える位置だからあんまり気が進まないけど・・・」


銀色の軌跡が煌く。

バタ、バタ、バタ、ドサ。

4人の男が倒れこむ。

リーダーらしき男を除いて全員。


「ねぇ?さっきなんて言った?股開け?誰に言ったの?ねえ?」

ヒジリの口角がわずかに上がる。

悪魔の微笑。


「お、おま、そ、その銀髪・・・ま、まさ・・・」

ドサ。ヒジリの綺麗な右腕が男の顎を掠める。


「その二つ名、嫌いなのよ。こんな美少女捕まえてバーサーカーなんて。

まったく嫌になっちゃうわ」


準備運動にもならないと呟き。ハツキの元に戻る。


「ヒジリさん!お疲れ様です!!!助けて頂き、ボク恐悦至極でございます!!!」

ハツキは背筋をピンと伸ばし、計ったかのような45度姿勢で礼を言う。


はぁー。と溜息一つ。

「ヤメテ!!!普通にしてていいから。あたしも狙われてたから追い払っただけ」

「追い払う?あれ死んでるんじゃない?」

「殺してないわよ!ちゃんと手加減してるわよ!」

「でもヒジリの動きすっごく綺麗で華麗だったよ。無駄が無いって言うか」

「え?あんた見えてたの?」

「うん!1人目は首に左手刀、2人目は鳩尾に右拳、3人目も同じ鳩尾だけど膝、4人目は顎に回し蹴り、最後は掌を顎に少し掠めただけで終わったでしょ?

なに話していたかは聞こえなかったけどね」

「お~~!凄い凄い大正解!!!」

えへん!と胸を張って変なポーズを取っているハツキ。

それを呆れた目で見つめるヒジリ。


「また変なの来る前に村に行こう」

ハツキの手を握り走り出すヒジリ。

「あっ!!!」

ハツキは気付いた。




「ボクの村そっちじゃないよ」

盛大に転ぶヒジリ。思わず笑いがこみ上げる。


2人は手を繋ぎながら村を目指す。

お互い別々の思いを胸に秘め。


・・・もう手の温もりも感じられないのか。なんか寂しいな・・・


・・・このコは絶対にあたしが護る。何があってもこの 暖かい・・・・手は離さない。



~ハルの村~


ボク・・の村へようこそ!ボクはヒジリを歓迎します」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る