第3話 出会い

ふふふ~♪

独特のポーズを取り満面の笑みを浮かべ笑う少年。


「やったぞ~!一網打尽♪」


ハツキが額に滲む汗を拭いながら喜ぶ。


トラップ・スティール発動後、すぐに自分を囲んでいた檻が

目の前に見えた。

その中で暴れまわるモンスター。


ギイギイ!

グワーーー!!


「お前達、何言ってるかさっぱりわからん。」


安堵の表情を浮かべもう一度、モンスターの数を数えてみる。


「1,2,3、、、9匹っと♪」


やっと一息ついた。


「さてと音の反響と地図を見比べてたけど、怪しいのはこの先だな。

          

あと少しで付くよ。  お父さん・・・・ 。」


ハツキは腰に付けている白の皮袋を何気なく撫でる。

ん???なにか違和感を感じながら・・・


「お父さん、ごめんなさい。また油断しちゃったよ。」


でも今回は逃げ回っていたから、気付かなくてもしょうがないよね。

と心の中で舌を出しながら目的の場所を目指す。


あった!!少年は目を輝かせ目の前の宝箱に近付く。



「やった♪ 宝箱カワイイコちゃん発見!」


慎重に冷静に。


グニャリ・・・

足元の土が変化する。


今回は慎重に進んでいたのもあって、すんでのところでトラップを回避する。


「落とし穴・・・」


しかしハツキは腑に落ちない。

こんな初歩的な罠に今更引っかかるはずが無い。

さっきのモンスターとトラップで疲れてるのだ。

そう思う。思い込む。

普通の状態なら問題ない。


「それでは熟練の解錠技術をお見せしましょ~」


ニヤニヤとしながら白の皮袋の中を探すが

解錠道具が見つからない。

皮袋をひっくり返し、解錠道具を探す。


「あった。あった。そろそろ道具袋の中の整理しなくちゃ・・・」


ハツキの頬に涙が伝う。

今度はハッキリ分かった。


「ハハハ・・・バカだな・・・ボク・・・」


感覚が無い。

モノを触った感覚も、掴む感覚も何も感じない。


声が聞こえた。



・・・ 《代償》  感覚及び痛覚  ・・・




涙が止まらない。


「ダイジョウブ・・・感覚なんて無くても開けられる・・・」


カチカチ・・・カチャカチャ・・・


解錠技術は鍵穴に道具を入れシリンダーの感覚を感じながら開ける。

それがわからない。

シリンダーが押し上げられる感覚が掴めない。


「開かない・・・開けられない・・・うう。。。」


お父さん。ごめんなさい。

お父さんに助けてもらった命。

お父さんの跡を継ぎたかった。

天才トレジャーハンターとして世界に名を馳せた父の様に。


・・・ハツキ、冷静に・・・


幻聴だったのかわからない。


ハツキは涙は止まらなかったが冷静になろうと心掛けた。


スーーーハーーースーーーハーーー

深呼吸。


「うん。もう大丈夫!」


すでにハツキの顔に笑顔が戻る。


「トラップ・スティール」


・・・ トラップ・スティール 発動条件確認・・・

・・・ 対象 宝箱 鍵・・・

・・・ 移動対象がありません。鍵は消滅しますが宜しいでしょうか?」


「YES」


良かった。罠だけじゃなく、鍵とかにも使える。

安堵の表情で宝箱に手を掛けようとした時、

後方で咆哮が聞こえる。


グオオオオオオ!!!!


嫌な予感がする。

宝箱はあとでも取れる。


急いで檻の場所に戻る。

なにかがおかしい。

檻にいるハズのモンスターの数が少ない。


「1匹しか・・・いない・・・」


檻の中が血の池のように地面が赤く染まっている。


ブタの顔をした様な鬼もいたはずなのに、

今は完全に鬼そのものだ。


        

・・・ 進化   豚・鬼神オーク・デーモン ・・・


その豚鬼が檻をただただ殴りつけている。


「嘘だ・・・コイツ・・・他のヤツら全部喰ったのか?」


頑丈であるはずの檻が今にも壊れそうな音で軋んでいる。

ガン!ガン!ガン!ピシィ・・・!


「あ・・・ヤベ~・・・壊されるんじゃね?これ?」


カランカラン・・・

檻が破壊された。


「腰が抜けちゃった。」


地面から立ち上がれず、震えることしか出来ない。


豚鬼は見逃さない。

どんなに小さなモノでも全力で狩る。


3本の指がハツキの頭に振り下ろされる。


「あぁ・・・鬼って知性と慈悲が無いから指が3本なんだっけ」


そんなどうでもいいことが頭を過ぎる。


激しい衝撃がハツキを襲う。

痛みは無かったが体が動かない。

お父さんはもっと痛かったのかな。。。


違う!これは切り裂かれた感じではない。

後方に飛ばされ、壁にぶつかった衝撃だった。


衝撃で目が開かなかった。


「目がチカチカする。」


ゆっくりと、恐る恐る目を凝らして、元居た場所に目を移す。


「あぁぁぁ・・・」


鬼が2匹いる。

自分を殺そうとした鬼より大きく、

全てを噛み砕けそうな牙。

全てを切り裂けそうな爪。

真っ白の鬼が。

ボクを突き飛ばしたときに切りつけられたと思われる

3本の爪の傷跡がある。


「白い鬼・・・?助かったの?」


油断は出来ない。

縄張り争いかもしれない。

このあとボクは・・・


衝撃で動けない。


白い鬼はハツキを一瞥し、爪を一振りした。

殺し合いは一瞬で終わった。あっけなく・・・


振り下ろした爪の一撃は豚鬼だけではなく

壁もろとも破壊していた。


次はボクの番かな。

もう諦めた。


白い鬼はまたハツキの方を一瞥し壊れたばかりの壁の穴から出て行った。


「ボク見られてたけど、助かった?」


ハツキは力の入らない足を無理矢理立たせる。


「早く、ここから逃げなきゃ。」


その前に一応、宝箱の回収を。


宝箱を目指し覚束ない足取りで歩く。


「ついたぁ~~~。つかれた~~~」


さてと宝箱っと。

ちょっと待って。この女の子なに?


銀髪の少女が倒れている。

なぜか裸で!!!

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