発想の転換が世界を変える
第九項 有給休暇と向き合えるか
有給休暇。
多くの経営者、多くの役職者を悩ませる、労働者の権利です。
これは労働基準法により労働者の権利として定められており、有給休暇取得に関する訴訟で多くの企業が敗退してきた歴史のある恐ろしい制度です。会社の所有者である株主や、経営を任されている役員や、現場を預かっている役職者にとって、あまり歓迎できるものではないでしょう。
ですが、昨今ではこの有給休暇の消化率にまで厚生労働省が目を光らせており、大企業では有給休暇の取得を従業員に推奨しているのが実態です。
勿論、中小零細企業にとっても悩みの種です。
余剰人員を抱える余裕のない状況で、戦力であるはずの従業員が有給休暇を取得するとなれば、会社にとっては単純なマイナスです。何もいい事はありません。出来れば取得しないでもらいたいとさえ思うでしょう。
毎月のように有給を申請してくる従業員が、憎たらしく思えてくるでしょう。
しかしそれを口にした途端、ブラック企業だと罵られる。
世の中、難しいですね。
つい最近お会いした経営者さんが、とても面白い事を仰っていました。
著者にはその発想が正しく目から鱗だったので、紹介させて頂きます。
「有給休暇は会社が抱える負債だと思っている」
この一言が「なるほど」すぎて、世界が変わった気がしました。
会社にとって最も良くない有給休暇の消化のされ方は、退職時にまとめて取得される事です。普段の休日と合わせると、余裕でひと月まるまる、場合によってはほぼまるふた月を休まれる。にも拘らず、有給なのでお給料は払わないといけない。
最悪の取得のされ方です。
ですが、これは負債を貯め込むから発生する事案なのです。
負債ですから、なるべく早く返済したほうがいい。返すならば、まとめてではなく、分割で返したほうが経営に与えるインパクトは少なくて済む。
まさに発想の転換です。
そして在職中にどんどん有給休暇を取得させる事により、従業員はそれをモチベーションに変換してくれるわけですから、離職も少なくなる。
いい事だらけじゃないですか。
経営者の皆さん、役職者の皆さん、従業員にどんどん有給休暇を取らせましょう!
会社の負債を分割で返済していきましょう!
そういった趣旨の事を会議で提言していきましょう!
従業員が有給休暇を貯め込むのは、消化されずに済んでいるというプラスに思えがちですが、全く逆なのです。退職時に纏めて取得されるという恐ろしいリスクを抱え込んでいるのです。
爆弾が毎年成長していくのです。
有給取得の推進は、従業員の不満解消に繋がります。
即ち、従業員満足度という指標に大きなプラスの影響を及ぼすのです。
そして同時に、会社が抱えている負債、リスクを分割で消化できるのです。
むしろ、お得です。
例えば何か嫌な事があってモチベーションが低下した社員が、日々の業務に疲れ切ったとします。
そこで手にした給与明細に、自分の有給休暇の残日数が記載されています。
24日。
そして思う訳です。
「これ全部つかったら、一ヵ月まるまる休めるのか……」
人間は楽な方に流れます。
転職サイトに登録し、会社に知られないままに転職活動を進める。
そして、次の就職先を見つけます。
世の中人手不足ですから、転職先などいくらでも存在するのです。
そして転職先への勤務開始日を決定し、そこにあわせて退職日を決め、その手前一ヵ月にまるまる有給休暇を当て込む。
「よし、これでいこう!」
有給休暇をたんまりため込んだ結果、それが退職の意思決定をさせてしまう。
転職活動の背中を押してしまう事もあるのです。
――有給休暇は会社が抱える負債
本当にその通りだと思います。
溜めてはいけません。絶対にだめです。
そういった発想で有給休暇と向き合えれば、従業員に取得させる事がストレスではなくなってきます。小出しに有給を取得してくれる従業員が可愛く思えてきます。会社の抱えるリスクを分散して消化してくれる、とても素敵な従業員に見えてきます。
なんだか随分と、有給休暇に対するイメージが変わると思いませんか?
実際にそう出来るかどうかは、人員の問題もあるでしょうし、どういった事業体なのかも影響してきます。ですが、最終的には上司次第。
つまり、皆さん次第です。
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