部下になる才能

一日でも早く一人前の大人になりたいならば

mission3 他人の影響力を受けよう

 個性を大切にし、自己を確立する。

 それも大いに結構だとは思いますが、他人からの影響力を拒否するような事にはならないで頂きたい。そう思う事が多い今日この頃。


 そもそも、人間は他人からの影響力の塊であります。


 身に着いた文化、習慣は無論の事、あらゆる自己形成は全て他人からの影響の元に成り立っており、それは原語にまで及びます。


 他人によって作られた価値観の元で育ち、他人が生産した食料を口にし、他人が扱う言葉を習得し、他人と同様に社会生活を営める習慣を身に着け、他人が作った服を着て、他人が作った道を歩き、他人が運営する交通ビジネスを利用し、他人が作り上げた経済の流れの中で、他人と一緒に生きているのです。


 そうであるにも関わらず、特段の理由もないままに頑なに「自分は自分」などと考えていては、己の成長に大きな障害となるでしょう。


 自分はそうじゃない。

 自分と他人は違う。

 他人は他人、自分は自分。

 それは彼なら出来るかもしれないが、自分には出来ない。

 どうせ自分はこんなだから、あの人と同じにはなれない。


 あらゆる局面において、時には自己肯定を行うため、時には自尊心を守るため、時には出来ない事の言い訳として、他人との間に線を引いて、その違いを理由にして何かと自分を納得させ、楽な方を選ぼうとします。


 それはいつしか、好ましくない事象を他人の所為にして乗り切るという、非常にやっかいな思考を育てるに至る。是非ともやめた方がいい悪習であると考えます。


 他人からの影響力を受けるという事は、その影響力に触れる事がなければ体験しえなかった何かを、自らが経験する絶好の機会なのです。


 尊敬に値する上司に影響されてみましょう。

 輝いている同僚に影響されてみましょう。

 いつも元気な友達に影響されてみましょう。


 ここで何より重要なのは、ネットに溢れる情報ではなく、出来る事ならば身近にいる他人、それも自分から見た時に「自分にはない何かを持っている人」からの影響力を受けてみるという事です。


 尊敬に値する上司がもしゴルフ好きなのであれば、大いに影響されてゴルフを始めてみましょう。

 輝いている同僚がもし歴史好きなのであれば、お勧めの小説のひとつでも聞き出して読んでみましょう。

 いつも元気な友達に行きつけのお店があるのならば、是非一緒に連れて行ってもらいましょう。


 そして当然、お仕事の面でも大いに影響される事をお勧めします。


 プライベート面でも、お仕事の面でも、悪癖を真似る事は避けた方がよいかとは思いますが、そうでないならば是非、影響されてしまうのが宜しいかと思います。


 経験の無い所からは何も生まれません。

 自ら体験するからこそ、それが糧になり、そこから何かが生まれるのです。


 影響されて始めてみるも上手くいかず、失敗する事もあるでしょう。

 ですが、影響されなかったらその失敗すら経験しないわけです。


 世の中には、あらゆる事に影響されやすい人がいます。

 最近では、子供に将棋をやらせてみたり、自分から将棋を始めてみたり、カーリング女子日本代表の選手が務める保険代理店から保険加入しようとしてみたり。


 Jリーグ発足の年には、野球部は壊滅的な打撃を受けました。新入生が挙ってサッカー部への入部を希望したためですが、それも影響力を受けた人たちが大半です。

 バスケが流行った時期もありました。

 テニスラケットを握って王子になろうとした人もいました。

 ブーツを履いて歌姫を真似たファッションを楽しんでいた女性が多かった時期もある。


 そういった種類の人達は総じて「ミーハー」などと呼ばれたりもしますが、決して悪い事ではありません。影響されなかった人達には「経験しなかった事」であり、影響を受けた人たちには確かな経験が残るのです。


 自分の周囲に存在している、自分にはない良さを持っている人。

 両親でもかまいませんし、兄弟でも構わない。


 自分ではない誰かが持っている、自分とは違うなにかを、貰いに行きましょう。


 影響され、経験し、失敗し、成功し。

 そうやって人間としての厚みを増していくのです。


 自分の趣味に没頭するのも宜しいかとは思いますが、それでは世界が一向に広がりません。

 全く未体験の世界に足を踏み入れてみましょう。

 そういう影響力を自分に及ぼしてくれる人を、大切にしましょう。


 もし身の回りにそういった影響力を及ぼしてくれる人が存在しないと感じているのであれば、既にかなり「危険な状態」になっていると思った方がいい。


 他人という存在への関心が薄れ、自己の中で物事を解決してしまう楽な思考が身についてしまっているのかもしれません。

 他人へ関心を向け、その人がどんな影響力を持っていそうなのか。

 その人が自分に影響力を及ぼすとしたら、それはどんな影響力なのか。

 そういった視点でも構わないので、先ずは他人をよく見る事から始めるのが宜しいかと思います。


 自分と他人は違うのですから、影響力が全く無い人などいないのです。

 他人という存在は全て、良し悪しは別にして何かしらの影響力を有しています。


 ゆっくりとで構いません。

 他人からの影響力を受けながら、自分という存在を大きくしていって下さい。




 そして人を統べる立場にある人は、その多寡を問わず忘れてはいけません。

 職場であれ、家庭であれ、何であれ、自分という存在は他人に対しての影響力を有しています。

 ポジションが高くなればなるほど、パワーを持てば持つ程、その影響力は大きくなっていきます。


 無論、その影響力の良し悪しは別にして。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る