上司になる才能

部下を育てたければ自分が成長すべし

第五項 伝え方の工夫がもたらす自己成長

 昨今、伝え方に対する考察が書籍にて発刊されるなど、注目を集めています。


 この手のマネジメントはもう随分と昔から行われており、今更の発刊に驚いている各業態のリーダーも多いのではないでしょうか。

 多くの人の目に触れ、多くの人の脳味噌で考えられ、様々な見解が付帯され、色々な言われ方をします。


 伝え方が100%

 言葉は全て相手の物

 伝えたかどうかではなく、伝わったかどうかである

 伝わらなければ伝えていないのと同じ


 これら全てに共通しているのは、要するに「伝え方を工夫しなさい」という点であるわけですが、なぜそうする必要があるのか、という事も忘れてはいけません。


 結果が全ての世界で生きている方はよくよくご理解を頂いている事とは思いますが、本当に世知辛く、結果が全てなのです。

 どう伝えたのか、どう伝えようとしたのか、それらは全く問題にならない。


 どう伝わり、それが伝わった事によってどのような着地に至ったのか。

 その結果だけが世に出るわけでありまして、自分の求める着地点にしっかりと誘導するだけの「伝達」が必要という事なのです。


 業者の手違いで、とか。

 頼んだのですが先方が遅くて、とか。


 そんなものは言い訳でしかなく、手違いが起こらないように伝えるのが仕事であり、遅れずにやってもらうよう伝えるのが仕事であり、そこに結果を導き出せなければ伝えたうちに入らないという訳です。


 世の中で仕事が出来る人というのは、大半がこの「伝え方」が優れています。


 さて、ここまでは一般論。


 ここからはちょっと踏み込みます。

 著者はこの「伝え方の工夫」に関して、最も大切な点は別に存在すると考えています。


 それは「自己成長」です。


 何か上手くいかない事に直面した時、それを他責にするか自責と捉えるか、その違いです。

 当然ながら、何かにつけて他責にして逃れる人は成長しません。

 逆に、事あるごとに自責として考え、自己に出来うる限りの改善を行う人間は大きく成長します。


 そんな事は皆さんよく分かっているのですが、上手くできないのです。

 なぜ上手くできないのか。


 とても簡単な話です。


 普段からやらないので、いざという時に出来ないのです。


 自己成長に繋がるような困難や失敗事例に直面する事は、そう多くはありません。

 その貴重な場面を自己成長として踏み台に出来るかどうかは、普段の生活で積み重ねた思考回路が決めると思います。


 伝え方の問題で多少の食い違いが発生する事など、日常茶飯事です。

 仕事、プライベートを問わず、家庭の中や友人間でも頻発している筈です。


 思いつくままに実例を挙げてみます。


「だから○○だって言ったじゃん。聞いてなかったの?」


 聞いてもらえるように言わなかったのでしょう。


「〇〇って言ったよね? 覚えてないの?」


 覚えてもらえない程度にしか伝えなかったのでしょう。


「そんな事は言ってない。言ったのは〇〇という意味で、勝手に勘違いしないでほしい」


 勘違いさるような伝え方をしたのでしょう。


「それは〇〇と言ったのであって、そっちが勝手に□□と思い込んだだけでしょう?」


 相手が□□だと思い込むような伝え方をしたのでしょう。


「だから〇〇してって言ったのに、なんですぐやってくれなかったの?」


 すぐにやってもらいたいなら、なぜそう言わなかったのでしょうか。


「ちょっと考えればわかるじゃん。こっちは○○してほしかったわけ」


 エスパーじゃないからわかりませんよ。



 こういった感じで、日々の生活の至る所にそんな場面が転がっています。

 そして例え、どんなに相手がバカであっても、上記のような「他責」で物事を解決する癖をやめましょう。


 これは訓練です。

 練習です。


 本当に自己成長に繋がるような場に直面した時、普段から他責にする癖のある人は、折角のその場でも他責にするでしょう。

 普段から自責と捉えて工夫する習慣のある人は、そのチャンスを無駄にする事なく自己成長につなげるでしょう。


 人間、やり慣れていない事は出来ません。


 一般人が突然「明日から宇宙飛行士だ」と言われても、出来るはずもない。


 プロ野球の選手ですら、毎日のようにキャッチボールをします。

 小学生の野球少年と同じ練習メニューです。


 年俸数億のスタープレイヤーでさえ、小学生と同じ練習をするのです。


 普段からやらないと、出来なくなる。

 元から出来なかった事柄であれば尚更であり、頑張って練習しないと出来るようにはなりません。


 思考回路も同じです。

 普段から「自責」として物事を考える思考を鍛えておきましょう。

 その為に最も良い練習が「伝え方の工夫」なのです。


 伝え方が全てであるという考え方を基本に置き、日常生活において頻発する伝え方の齟齬を自責として捉え、創意工夫し、思考回路を鍛えるのです。


 それは単純に自己研磨であるわけですが、それがもたらす副産物は少なくありません。


 仕事の出来ない部下だと嘆く前に、仕事の出来ない部下にどうやって結果を出させるのか、それにはどんな伝え方が良いのか、日々工夫して下さい。


 部下の仕事が捗らない事を自責として捉え、真剣に取り組む。

 そんな素晴らしい上司に、部下が着いて来ない筈もなく。

 そうやって仕事面で部下から慕われ、徐々に結果を出していく上司を、会社が評価しない筈もない。


 皆さんはもう新卒でも新入社員でもありません。

 自分にしっかりと矢印を向けて、自責として物事を考える思考回路を身に付けましょう。


 練習あるのみ!

 ですよ。


 次回は明日からでも使える上司のテクニックをご紹介します。

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