この物語は、生きることの本質を浮き彫りにする

新種のウイルスに感染した人間がゾンビ化し、街に蔓延し始めた。
ある種の様式美な展開から容赦なく始まる極限生活。主人公の邦彦はまだ中学生で、一人で生きていく力も知恵もない。そんな彼を周囲の家族や友人が助け、導き、やがて人間としての逞しさを身に着けていく。

本作はゾンビパニック・サバイバル小説ですが、なんといっても主人公を含めたキャラクターの生き様が素晴らしく格好いい。
言わずもがなじいちゃんは、邦彦に剣だけでなく生きる術と生きる意味を教えてくれる。他の面々もたくさんの悩みや事情を抱えながら、支え合って一瞬一瞬を強く生きている。
泣かせられる場面も多くて、じいちゃん関連と、邦彦の親父さんの場面では涙ぐんでしまった。
本作では他人と共に過ごすことの大切さと、支えになる誰かの言葉の重要さをひしひしと感じる。

現代では当たり前になってしまったものも、元は人間が生きるために培ったもので、そこに意味はない。剣道だってその一つに過ぎない。とにかく生きて、大切な人のそばにいることに意味がある。
単純明快でガツンとくる思いに打ちのめされました。

読みやすく完結されておりますので、一気に読み切ってしまうことをおすすめします!

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