2:カクヨムレビューを10回以上書いた方の自信作 まとめ(その1)

7月いっぱい開催した「カクヨムレビューを10回以上書いた方の自信作」。29作のご応募をいただきました。ありがとうございます。


全作品、とりあえず冒頭だけは全作品読ませていただきました。

私が予想した通り、文章力と構成力が高く、プロットとギミックに凝ったハイレベルな小説ばかりでした。

正直、読んでてうらやましかったです。こんなに面白い小説が書けるなんて…。

くやしい!でも読んじゃう!


それでは、第一回目の入賞作品の発表です。

「第一回」というのは、現状で12作品しか読んでいないためです。さすがに29作品を一ヶ月で読み切るのは大変でして…。

全作品を読んだ後に、第二回/第三回の発表、総評をしようと思っています。



■入賞作品のご紹介


現在読んだ12作品の中で、★★以上のレビューをつけさせていただいた作品は、以下の語作品です。


★渡し守/水円 岳さん

★キリトリセン~芸術的勇者~/寝る犬さん

★ケンタウリまであと100年/山吹さん

★節目/目さん

★もう水族館なんて行かない/夏野けい


■各作品レの書評


★渡し守/水円 岳さん


序盤から中盤にかけての、不自然ながら叙情的な風景は、一読で三途の川の話をしているのだろうと思いつきます。

だが、それにしてはちょっと違和感がある。しかもこの違和感、なんだろう、このわざとらしい穴の正体は。

その違和感の理由があかされた時、前半に仕掛けられた様々なファクターがまるでパズルのようにカチカチとハマっていく。

フラットな展開の中盤からは予想できない、まるで逆落としのような「答え合わせ」にミステリーのような読後感を味わいました。



★キリトリセン~芸術的勇者~/寝る犬さん


ネクロフィリアを患う勇者の物語です。生物を物体に変えることに執着する変質的な主人公なのに、凄惨な印象もなく軽快な読み味で描ききっているのは作者の文章力のたまものでしょう。

また、足しすぎず引きすぎない5000文字以内で書かれた物語は、構成の巧みさでぐいぐいと読者を引っ張ります。

全ての屍体愛を放出して迎えたエンディング。しかし性癖はそう簡単に洗い落ちないもの…。わずかな狂気を含んで降りた幕に、こちらもシニカルな笑いがこみ上げてきそうになりました。



★ケンタウリまであと100年/山吹さん


疾走感のある第一話、二人の過去に言及した第二話。そして前二編の解決編となる第三話、そして結末と、決して長くない文章量ながら優れた構成の作品だと感じました。こういうSF短編、大好きです。

物語の縦軸をつむぐコールドスリープ、ラーメン、スターゲイザーを中心に幼い頃から変わらない二人の(恋愛)関係がスライドしていく。その関係は幾星霜を超えて続いていく。ロマンチックな結末も見所です。



★節目/目さん


戦後から高度成長期の頃に書かれた純文学のような文体で、ナンセンスな事件を扱う。筆者の豊かな読書経験と高い文章力が伺えます。マンガで例えるならガロ系でしょうか。

短編ながらダイナミックな展開があり、普遍的な日常風景から高位的な存在まで高められていく主人公の変化がみどころです。



★もう水族館なんて行かない/夏野けい


直接的な説明がなく、シーンの描写や会話劇で物語を浮き立たせているので、叙情的な掌編に仕上がっています。

そのため、常に読者に「なぜ?」と思わせる展開となり、最後までだれずに読むことができました

主人公がやや投げやり気味なのは、自分の身体的な問題で迷惑かけるのがいやなのか、自分に自信がなかったのか。彼の決意が強いと気づき、エンディングに向かう流れも共感がもてました。



なお、上記作品のうち一番のお気に入りは目さんの「節目」です。

なのにレビューが非常に短いのは、この作品を形容するのにどんな言葉が適当なのか、思い浮かばなかったからです。

口語表現が固定した大正時代の文学を思わせるナンセンス、幻想幻視、物体の擬人化をテーマとした小説、それらをモチーフとして描かれた1960~70年代のマンガのような読後感があります。不思議な作品です。

まあ、単純に私の好みだった、という話なのですが。

目さんは、この時代の本をかなり読んでいらっしゃるのではないでしょうか。

ぜひ、一読をオススメいたします。



ところで、みなさんの作品を読んでいるうちに、「今回応募いただいた方のうち、本気で「小説家になりたい」と思っている方はどれくらいいるのかな」などと考えてしまいました。

本自主企画の応募作品は、それほどレベルの高い作品ばかりでした(自信作との条件をつけたので、当然とも言えるでしょうが)。


カクヨムの小説は、ほとんどが趣味の産物です。。今回応募いただいた作品も、ほとんどが趣味で書いたもの、書かれたものだと思います。

ではなぜ、これほど文章力を磨いているのか。そのモチベーションが私、気になります。

みなさんはプロを目指しているのか、それとも趣味として文章を極めようとしているのか。どちらなのでしょう??


もし良かったら、この記事のコメント欄などに書いていただけると幸いです。


では、第二回目をお楽しみに。


(続く)

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