第3話 どうして

あの日から随分経った…。

今ではお城の中の構造もちゃんと覚えたし簡単な仕事ならちゃちゃっと終わらせられるようにもなった。他のメイドや執事とも仲良くなれたし、国のヤツらともまあまあいい関係は築けているだろう。

1度国民たちにあの3人のことを聞いてみたが優しくて頼りがいのあるいい男だ…あ、いや違う。これは噴水近くの家のおばあちゃんの意見だ。

でもまあ大体みんな言ってることは一緒で、あいつらはこの国のことはめちゃくちゃ大切にしているらしい。俺から見てもわかる。


だからこそ、明日香が言っていたあの行為は国を作る前…であってほしい。


「…………う。…ゆ……!」


っていうかさっきから誰だよ。うるさいなー。

今考え事して…。


明日香「ゆーーーーーうーーーーー!!!!!」


ゆう「はい!!!!!!」


俺は明日香の大声に現実に引き戻される。

目の前にはさっきまで考えていた3人の心配そうな顔。いや待て龍はいつもと変わらず無表情だ。


明日香「もー。今の話聞いてた?」


ゆう「あ…いや…悪い。聞いてなかった」


明日香「えー!?」


龍「ゆう。俺も聞いてないから安心しろ」


明日香「ちょっと!龍は論外!会議中に寝るのは違う!」


明日香がそう言って龍を説教し始める。

そうだった…今は会議中だったか。議題は『自由』。いや、そのままの意味の自由だ。…ようは議題するものがない。


翠「…ゆう大丈夫?もし具合が悪いようなら部屋戻っていいよ?」


ゆう「大丈夫だって。ちょっと考え事してたんだ」


翠「そう?…ほんとに具合悪くなったら休んでいいからね!?そこらへんうちホワイトだから!」


ゆう「ホワイトって…。まあ、ああ。わかった。お前もな?」


翠「俺は大丈夫!さ!明日香!話の続きの前にお茶入れ直して!」


明日香「え?あ、そうだね。りょうかーい」


明日香がみんなのカップをお盆に乗せてキッチンに向かう。

この前まで台所とか言ってたけどそりゃお城だとそんな言い方しないよな。

と思いながら俺も立ち上がりその横に並ぶ。


明日香「おっ。手伝ってくれるの?」


ゆう「あぁ。騎士って修行意外にやることがほとんど無くて暇だからな」


明日香「ははっ。そりゃそうだよ。この国は平和だからね。…あれ?だったらなんで翠はゆうに騎士っていう仕事を与えたんだろ…?」


明日香が紅茶を入れる手を止め考え始める。

確かに明日香の言う通りだ。この国が平和だってこと、1番わかってるのは国王である翠じゃないのか?


ゆう「…最終、兵器」


明日香「え?最終兵器…って、なに?」


ゆう「あ、いや、なんでも…」


無意識に呟いていた…。

明日香は首をひねりながらさっきまで止めていた紅茶を入れる手を動かす。

俺は小さくため息をつきいつも右腕に通しているブレスレットを見る。ブレスレットは前も言ったとおりまあシンプルなもの。その中の大きめの玉が太陽の光を受けてキラリと光る。


…そしてこれが俺がここに来た理由の一つだったりする。

この際だ。話してやろう。


__俺"ら"の村の話を。

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