第六章 休日デート

18:ここにもしフランクフルトがあったら、もっとえっちなのに!



 異世界に来てはじめての休日がやってきた。

 朝早く目が覚めた俺は、上のベッドで眠っている女神様を揺すって起こした。



「なんですかぁ。休日くらい昼まで寝させてください」

「女神様は毎日が日曜日じゃないですか。せっかくのお休みなんだから、外行きましょう。町を案内してくださいよ」


 女神様ってば、いっつも通りをふらふら出歩いて飲み食いしてるみたい。

 俺だって異世界の町を楽しみたいんだ。ゆっくり昼まで眠るなんて、させないぞ。

 二度寝しようとする女神様をひたすら揺すってやると、女神様は目をこすりながら上半身を起こした。


 ネグリジェの肩紐が片方だけずれて、イケナイ部分が顔を出しそうになっている。

 とっさに、俺は視線を横に逃がした。



「仕方ないですね。その代わり、ご飯はおごってくださいよ」

「奢るも何も、日銭を管理してるのは女神様じゃないか」

「そういえばそうでしたね。着替えるので、外で先に食堂に行っててください」

「なんなら、俺が着替えさせますよ」

「死んでください」





 まだ目が半開きなので不安だったけど、女神様はちゃんと食堂に来てくれた。

 朝食のスライムゼリーとかいう物体を喉に流し込み、町の大通りまで足を運ぶ。

 女神様は、三段重ねのフリルが可愛いピンクカラーのミニスカートと、同色のブラウスを着込み、健康的な小麦色のお腹を露出している。


 可愛いけど、その服どうしたの?

 俺の稼いだ金を使ったんだろうなあ。


 一日に一、二回しかプレイしていないわりには、そこそこお金を貰っている気がするので、好きに使ってくれていいんだけど。

 それに、可愛い女の子を連れて歩いていると思えば、気分も良くなるしね。



「それにしても、この世界の女の子はレベルが高いなぁ」


 ちょっと歩いただけなのに、次々美少女が目に飛び込んでくる。

 さすが女の子の多い世界なだけあって、露店でよくわからない肉を焼いているのも、地面に絨毯を敷いて果物を売っているのも、みんな可愛い美少女、もしくは美人のお姉さんだ。


「感謝してくださいよ。この世界に連れてきてあげたのは、この偉大なる女神フラン様なんですから」

「男向けのえっちなお店もあったら、最高だったんだけどなぁ」

「過ぎたことをグチグチ言わないでください」


 過ぎたことで、ない胸を張ったくせに。




               ❤❤H❤❤




 通りをぐるりと一周し、武器屋に入って剣や盾を眺めていると、あっという間にお昼の時間がやってきた。

 スマホは異世界に持ってこれなかったので、広場に建つ時計塔で時間を確認したのだ。


「どこかお店にでも入ります?」

 俺が訊ねると、

「せっかくなので、お外で食べたいです」


 女神様が屋台の間に挟まれた、横長のテントを指差した。縁日の時にあるような、屋台で買ったものを食べられる休憩スペースみたいなところだ。



「じゃあ、なにか買ってからあそこで食べますか」

「私、あれが食べたいです!」


 女神様が、フレアポークの串焼きなるものを指差した。

 女神様はソースの異なる串を四本購入し、うち二本を俺に手渡すと、空いている席へと駆けて行った。


 なんだかさ、凄く青春っぽくない?

 女の子と健全なデートをするのは諦めていたのに、まさか女神様とお外を満喫できるなんて。

 最初に思い描いていた甘い日々に、なんだか近づいてきている気がする。


 あとは、えっちパートにまで持ち込めれば完璧なんだけど。

 そこまで持って行くほどのコミュ力と勇気がない。



「ん~、美味しい♪」


 女神様がお肉をもぐもぐ、満面の笑みを浮かべている。

 まあ、いいか。これはこれで幸せだ。


「んじゃ、俺も食べるか」


 俺のフレアポークは、塩味とピリ辛ソースだった。

 一段目のお肉を食べ尽くすと、



「一口ください」



 女神様が口を開けた。

 ここで妄想の俺なら、口移しで食べさせちゃうんだけどなぁ。

 ただのあーんでも嬉しいので、串を口に入れてあげた。


「んぐんぐ」


 小さなお口を一生懸命動かして、俺の串焼肉を頬張る女神様。

 なんか、えっちだ。

 ここにもしフランクフルトがあったら、もっとえっちなのに!



「ひゅうっ、熱いねぇ姉ちゃん達」


 突然、タンクトップに作業ズボン姿のお姉さん達が正面に座り、口笛を吹いてきた。

 耳が尖っている。念願のエルフだ!

 しかし、腕が太いし腹筋は割れてるし。


 エルフってか弱いイメージがあったんだけど、この人たちは炭鉱で働いてそう。絶対、物理攻撃が強い。



「可愛い彼氏を連れて、嫉妬しちまうねぇ」

「ひゅうひゅう」


 しかもガラが悪い!

 って、可愛い彼氏って俺のこと?

 男なのに可愛いって言われても、なんだろう。うん、悪い気はしないなあ。



「か、彼氏なんかじゃないです」


 女神様は耳まで赤くなって、自分の串を素早く口に詰め込む。

 それから立ち上がり、


「お手洗いに行ってきます」


 逃げてしまった。

 照れたのかな。可愛いなあ。



「あーらら。彼氏を放って逃げるなんて、酷いねぇ」


 筋肉エルフさん達の視線が俺に注がれる。

 何故か、寒気がした。



「あんな冷たい女より、アタイらと遊ばないかい?」


 えっ、なに?

 ナンパされてるの?

 人生初めてのモテ期到来?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る