第五章 痴漢してください

15:お嬢様のキス激しすぎいいいいいい!



 今日も、最初の仕事は昼過ぎからとのこと。

 とくにすることもないので休憩室で妄想していると、サンドイッチの乗っている大皿を持った女神様が入ってきた。


「あれ、なんで……? まさか女神様も働くことにしたんです?」


 となるとレズプレイだ。

 女神様を他の男にやらされるのは我慢がならないけど、女の子同士ならありな気もする。

 俺も、女神様を撮影したいです。


 女神様は大皿をテーブルに置くと、


「そんなわけないです。私はトモマサさんに養ってもらうと決めているんです。働きません」


 堂々とヒモ宣言をした。

 いっそ、嫁になってくれればいいのに。そうすれば、頭のおかしいプレイに精神を削ることもなく、優しくて楽しいえっちが出来る。

 どのみち、仕事はしないといけないけどね。



「こっちでお昼を頂いてもいいと聞いたので。一人で食べるよりかは、トモマサさんでもいないよりはマシです」


 現実はこの扱いだ。

 言いながら、女神様は黙々とサンドイッチを口に詰め込む。

 既に半分しかないんだが、どんだけ食うんだこいつ。


「俺でよければ、いくらでも一緒に食べてやるけどさ」


 別の意味でもね。

 なんて、思っても言えないけど。

 このままでは昼抜きにされそうなので、俺もサンドイッチに手を伸ばす。



「私を食べてやる? 相変わらずの変態発言ですね」


 と思ったら、これだ。



「言ってねーよ」

「それで、今日はどんなマニアックなプレイをするんですか?」

「冒険者コースの亜種ですよ。相手は村を襲う盗賊役、俺は村の少年役。弟を逃がすために盗賊に立ち向かい、押し倒されてしまう役らしいです」

「似合わない役ですね。トモマサさんの場合、弟を盾にして逃げそうです」

「酷い決めつけですよ。俺だってやるときはやるんだ。そうだなぁ。可愛い妹のためなら命だって捨てますね」

「現実には可愛い妹がいないから、いくらでもホラをふけますね」

「まあ、ね……」


 すると、ドアが開いた。


「トモマサさーん、出番でーす」


 あれっ、俺まだサンドイッチ食ってないんだけど。


「頑張ってきてください。私のために♪」


 女神様が俺の手から、サンドイッチを奪った。




               ❤❤H❤❤




 民家を模したセットの中で待っていると、赤いロングスカートのドレスを着た少女が入ってきた。

 腰まで伸びた長い髪は、ドレスよりも濃い炎のようなレッドカラー。右手に持った赤いセンスを口元に当てて、


「おーほほほ! 盗賊団フレア参上ですわ!」


 どう見てもお嬢様にしか見えない笑い方をした。

 今日の女の子は美人タイプだ。ともかく、演技スタート。



「に、逃げろ弟!」


 とりあえず指定された役を果たそうと、恥ずかしさを覚えつつも叫んでみる。

 だが、弟役のそれは動かない。

 だって人形だもの。


 床に横たわり天井を見上げたままの人形。これ、必要だった?



「あらあらまあまあ。弟想いのいいお兄さんだこと。これは犯しがいがありますわね」


 あ、こんなんでよかったみたい。

 お嬢様が閉じたセンスを俺に向け、


「フレアウィップ!」


 先端から赤い鞭を放った。



「わひっ」


 燃えるような紅蓮の鞭が床を叩き、俺の足元からじゅうじゅうと煙が登った。

 みると、床が黒く焦げている。

 ええええええ~~~~!?

 こいつ、魔法を使ったぞ!


「うふふ。抵抗しなければ、当てはしませんわ」


 可愛い顔して残虐そのものな笑みを浮かべる。



「衣服くらいは剥ぎ取ってしまうかもだけど♪」


 お嬢様が歩み寄ってきた。

 そして、センスを持たない方の手を振り上げる。


「ひいっ」


 これ、マジモンの悲鳴。

 頭を抱えて震えていると、顎をくいっと持ち上げられた。

 まさかもうキスですか?


「愚か者!」


 ばちん。

 ビンタされた。



「……えっ、え?」


 尻餅をつく俺。

 お嬢様の股間が目の前にある。



「なっていませんわ。もっと死ぬ気で抵抗なさい。でないと、陵辱感が出ませんわ」


 一瞬、なにを言ってるのかわからなかった。

 お嬢様がセンスで壁を指し、そこにレプリカの剣が飾ってあるのを見て、理解した。

 ああ、本気でダメだしされたのか。



「す、すみません……」

「謝罪はいりません。さあ、剣を手に取り私を襲いなさい。股の間にぶすぶす刺して、ぐっちょぐっちょにしてやるつもりで」



 すげえこと言うなぁ。

 セリフだけだと、すっごくえっちなのに。

 仕方なく、よろよろと立ち上がり剣を手に取る。

 だってさ、抵抗したら魔法を撃つなんていうからさ。

 いや、そういうキャラ設定ということで、本気で撃ったりしないんだろうけど。怖いものは怖い。なにせ、初めて見る魔法だもの。



「うふふ。そんななまくらで、どうしようっていうのかしら?」


 センスを口に当て直すお嬢様。

 攻撃して来いってことだよね?

 よし、ならやってやる!



「ていっ!」


 剣を振り上げたままどたどた駆けて行って、お嬢様の正面で振り下ろした。なんだかカッコ悪い攻撃になってしまった。女神様が見ていないことを祈ろう。

 両手で振り下ろした剣は、片手持ちのセンスで受け止められた。


「はぁ。ダメですわね」

「えっ」


 さっきとは反対側の頬を叩かれる。

 再び、尻餅をつく俺。もうカッコ悪いなんてレベルじゃねえ。




「本気で抵抗なさいと言ったはずですわ」



 したんだけど。今のが全力の一撃だったんだけど。


「仕方ないですわね」


 お嬢様はため息をつくと、俺の胸倉を掴み強引に立たせた。

 そして、今度こそキスされた。


「んぐっ!?」


 驚いて目を見開くと、すぐそこにお嬢様の綺麗なまつ毛があった。



「んっ……ぁっ、んふぅっ……」


 鼻息が荒いよお嬢様。

 ああっ。お嬢様の目が開かれた。

 至近距離で見つめられて、ひぅっ、舌が吸い付いてくる。なんか、吸われて――。


 じゅるるるるるるる。

 痛い痛い痛い。掃除機みたいに舌を吸ってくる!

 お嬢様のキス激しすぎいいいいいい!




「ぷはぁっ……」


 お嬢様は俺の唇と舌を解放すると、突き飛ばしてきた。

 三度目の尻餅をつきながら、俺とお嬢様の唇を唾液の線で繋がっているのを確認する。

 なんだろう。女神様のキスより激しくて、エロかったぞ。


「はぁっ、はぁっ……」


 自然と息が荒くなる俺。

 お嬢様は唇から唾液の線を垂らしたまま、センスを俺の顔に突きつけた。



「次来る時までに、痴漢のされ方を勉強しておきなさい!」



 えっ、俺今痴漢されてたの?

 結局、その日の指名は彼女だけだった。


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