10:吸血プレイでビンビンに




 13時。



「お前の薬指、俺が予約したから」

 妄想シチュのキメ台詞を口にしたのと、


「トモマサさーん、使命入りましたー」

 ルーシアさんが迎えに来てくれたのは同時だった。


「るるるルーシアさん!?」

「ごめんなさーい。結婚はまだ、考えてませーん」

 笑顔でフラレた。


「いや、違うんです! 今のは!」

「お仕事の練習ですよね? わかってますよー」

「えっ、あ、そうです。練習です」


 そういうことにしておこう。



「今回も冒険者コースでーす。トモマサさんは吸血鬼タイプの魔物に襲われる役でーす」

「えっと、それってなにをすれば……」

「適当に抵抗しつつ、やられつつでお願いしまーす」


 なにその曖昧な指示。

 まあどうせ、俺なんかが抵抗しても勝ち目はないんだろうなあ。

 だったら全力で抵抗すればいいか。

 で、女の子はそのまま押し倒されちゃうのか、やっぱり俺を襲うのか、向こうが決めてくれるさ。


 すっごく情けない考え方である気もするが、仕方ないよね。だってか弱い男の子なんだもんっ。



「あとこれ、必要なら使ってくださーい」

 十字架のペンダントと、網袋に入ったニンニクを渡される。


「えっと、吸血鬼だからですか?」

「そうでーす。お客さんからの要望なので、少しは使ってあげたら喜ばれると思いまーす」


 なんだろう、エムっ娘なのかな?

 しかし、ファンタジー世界にまで来て、吸血鬼に十字架とニンニクを使うとは。

 いや、ファンタジー世界だから使うのか?

 考えてみたら、地球の現実には吸血鬼なんていなかったしな。





              ❤❤H❤❤




 更衣室に用意されていたのは、昨日と同じ鎧と剣のセットだった。素早く着替えて、口内を洗浄してから指示された部屋へと移動する。

 「03」と書かれたプレイルームだ。

 残りの部屋には別の男がいるのかな。それとも、別のコース用?

 扉をノックして、そっと中に入る。



「うおっ、可愛いっ!」



 すんごいえっちな美少女がいた。

 黒いマントをつけた、黒髪ツインテールの美少女だ。

 多分、マントは吸血鬼の演出なのだろう。

 でも、その下は実に変態じみていた。


 絆創膏だ。

 乳首とスジの部分だけを隠した、絆創膏スタイル。なにこれ、こんなの薄い本の中でしか見たことないっ!

 貧乳なのもいいね。やっぱり絆創膏コーデにはロリボディがよく似合う!

 年齢は、多分俺と同じくらい。もうちょい幼く見えるけど、15歳未満は入店禁止のはずだし。


 セットは森風だった。

 壁に森の絵が描かれていて、床は地面っぽいデザインで、本物の木がところどころに生えている。

 床から木が生えるなんて、魔法かな?



「フハハハハ! 愚かな冒険者め! 妾は吸血“姫”ブラックスパイラル! 貴様に引導を渡す者じゃ!」


 ツインテールっ娘が、腰に両手を当てて高笑いした。

 ない胸を張って、うひょーっ! 

 絆創膏が反れて剥がれそう!

 見えそうで見えない乳首にドキドキしつつ、今回は当たりかも!

 なんて、気分が高揚してくる。


「さあ剣を抜け、愚かな冒険者よ!」


 しかも、次になにをすればいいのか指示までくれる。

 マジモンの天使だ!

 俺は慣れない手つきで長剣(もちろん下の剣ではない)を引き抜き、両手で構えた。


「ゆくぞっ!」


 ブラックさんが迫ってきた。

 ぴょんぴょこ揺れるツインテールが可愛い。

 先生、そっと摘んで、毛先にキスしたいです。

 ってか、俺はどうすればいいんだ?

 とりあえず、ゆっくり剣を横に振るってみる。


「甘いわ!」


 右手を叩かれた。

 長剣を落としてしまう。ブラックさんは、そのまま俺の背後に回り込み、首に両手を回してきた。


 うおおおおおーーーーーーーーー!

 と、とととととと吐息が!

 吐息が首にかかりゅ~~~~~~っ!


 くすぐったいし、あったかいし、なんか石鹸みたいなイイ匂いもするし!

 うひょおおおおおおおおお~~~~~~~~~~!

 これっすよ!

 これを求めていたッスうううううううううううう~~~~!



「ふふ、震えておるのか?」


 ブラックさんが耳元で囁く。ゾクゾクする。声だけでイッちゃいそう。

 俺が女の子だったら、耳が妊娠してる。

 首に回した手が、鎧の上から俺の胸を撫でる。多分、背中に胸を密着させている。

 くそぅっ、鎧なんか着ていなかったら感触を楽しめるのに!

 えっちなちっぱいぱいの感触をさァ!

 恥ずかしながら、すでに俺のエクスカリバー、ビンビンカリバーになっていた。



「では、いただこうかの♪」


 ビンビンカリバーをですか?

 違った。

 ちくり。

 首筋に二つの痛みが走った。




「……えっ?」




 どくっ、どくっ!

 そんな、脈打つ音が聞こえる。

 もちろん、ビンビンカリバーの脈打つ音ではない。首の血管が、びくんびくんと震えているような気がする。



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