ぷろろーぐ 後編・女神様と一緒に


「戦争のない世界なら、剣や魔法はいらないんじゃないですか?」


 と女神様。



「なにをいう! そこは男の子のロマンでしょ! 広大なファンタジーワールドを馬で移動して、剣とか魔法とか弓で動物を狩って食べるんだ。それで、女の子もからも

『お強いんですね! 抱いて!』

『かっこいいわ! 抱いて!』

『あたしの心も射抜かれたい! 抱いて!』

 とか言われちゃいたいんですよ!」



「どんだけ抱かれたいんですか」

「で、出来ませんか?」

「無理です」


 きっぱり、言われた。

 バカな!

 頭をコンボウで殴られたみたいに、俺はふらついた。

 だってさ。普通転生モノっていったら、主人公にとって都合のいい世界に行けるんじゃないの?

 まさかの、違うパターン?


 俺、邪道より王道の方が好きなんだけどなあ。

 ……なんて。わかってるよ。俺は主人公なんてガラじゃない。


 でも、だからってえっちな夢は諦められない。どうせ死んでいるんなら、恥も捨てちゃえ!




「じゃあせめて女神様と――」


 土下座しようとしたら、


「落ち着いてください!」


 ビンタされた。

 どうせなら、キスで黙らせてもらいたかった。



「悪行をはたらいていないとはいえ、そこまで善行をつんだわけでもないあなたでは、出来るのはせいぜい今の容姿のまま、えっちなお店のある異世界に行くくらいです」

「え? じゃあ、えっちなお店のある異世界には行けるんだ?」

「そういうことです」


 女神様が頷いた。



「なんだ。焦って、恥ずかしいことお願いするところだったよ」

「恥ずかしいセリフなら、吐きまくりですけどね」


 ジト目になる女神様。

 そんな顔もかわいいなあ。やっぱり、女神様ともえっちなことしたかった。


「まあいいや。じゃあ、それでいいです。俺17歳ですけど、お店入れます?」

「そのくらいはサービスします。15歳からOKの世界に飛ばしてあげます」



 やったね!

 合法えっちわっしょい!



「あ、お店には15歳以下の女の子も来ます? 10歳位の女の子に『ママァ~~、おっぱいほちぃの』って言いながら抱きついたり出来るようなバブみ感あふれるお店とか……」


 女神様が一方後ろに下がった。



「……はなくていいです。すみません」

「異世界だからって、小さい子に手を出すのはダメです」

「言ってみただけです、ほんとすみません」



 とまあそんな風に、転生(召喚か?)先が決まったわけなんだけど。




「開け転生の門よ!」



 女神様が両手を天に向けて伸ばした。

 うおおぅ、綺麗な脇が丸見えだ!

 美少女の脇って、えっちだよね。

 純白のパンティみたいに汚れなき空から、聖水のごとく黄色い光の柱が降りてきた。俺は柱に包まれて、ふわりと身体を浮かす。



 ……けどさ。

 容姿はこのままってことは、イケメンではないわけじゃん?


 多分、コミュ力もこのままだよね。

 ぼっちの俺に、本当にえっちなお店を楽しむことが出来るのかな。


 だって、17年間、彼女はおろか友達だっていなかったんだぞ!

 絶対きょどるわ!


 急に怖くなって、俺は空に舞い上がる直前、女神様の手首を掴んだ。




「やっぱ不安なんでついてきてください!」



 不思議と、女神様に触れることには躊躇しなかった。

 あるいは、必死なだけだったのかも。



「ええっ?」

「転生先までの引率、お願いします!」

「それはサービス外です! あっ、私の身体まで浮いて――ちょっ、やめっ、離し――」


 光が強くなって、俺の視界が真っ白に染まる。



 こうして俺と女神様は空高く舞い上がり、そのまま光に飲み込まれ転送されていった。


 生前の未練を断ち切るべく。

 童貞を卒業するべく。

 えっちで楽しいことでいっぱいの、素晴らしい異世界に行ける――と信じて。


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