聖剣の使い『足』

狼狽 騒

プロローグ

第0話 プロローグ

 ――刃を交える音が鋭い音が、何もない荒涼とした丘に響き渡る。


 いるのは二人の青年。

 二人の手には剣が握られている。

 彼らは剣の使い手。

 しかも頂点を争う凄腕の使い手であった。


 一人の字名は――剣聖けんせい

 一人の字名は――剣豪けんごう


 どちらが強いのか。

 人々は誰しもが思考した。

 その答えはもうじき出ようとしていた。


 二人の姿はボロボロであった。


 一人は左手が動いていない。

 一人は右足を引き摺っている。


 満身創痍である。

 それでも両者は一歩も引かず、お互いに剣を振るい続ける。


 その剣は、お互いの息の根を止めるために。

 各々の目的を果たすために。


 やがて天気も荒れてくる。

 まるで二人の戦闘の激しさを象徴するかのように。

 雨が降り。

 風が吹き荒み。


 それとは対照的に――ピタリと。

 彼らの動きは止まった。

 雨で手に持った剣を、足を滑らせてしまうこと。

 それを恐れた。

 だから今までのように剣を合わせることが出来なかった。

 故に、二人とも瞬時に理解した。


 ――次の一撃で決まる。


 二人は呼吸を整え、剣を構えた状態で制止する。


 そして雷による閃光が走った瞬間――



「はあああああああああああああああ!」

「ああああああああああああああああ!」



 叫び声と共に二人の姿が交錯する。


 そして訪れる静寂。

 微動だにしない二人。


 幾秒か。

 幾分か。

 幾時か。


 永遠とも思える時間が過ぎた時。


 二人は共に――崩れ落ちた。



 



 これが世界を二分する戦いであり後の伝説となる――『剣戟収攬けんげきしゅうらんの戦い』の幕切れの瞬間であった。

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