第3話 出張どら焼きの日

 仕事で出張に行く。

 泊まりになると、どら焼きを買って帰れない。

 出張は1か月前から決まっていたんだけど、なかなか言い出せなくて1週間前になってようやく言った。

「今度の水曜と木曜は出張なんだ」

「そうなんだ。どこ行くの?」

「仙台までだよ。支社があるんだ」

「気を付けてね。用意するものある?」

「大丈夫、1泊するだけだから。ありがとう」

 あれ? 何てことなく会話終わっちゃったけど気づいてるのかな?

 出張に行ったらどら焼き買って来れないよ?


「……和美さん?」

「なに?」

「そ、その……、どら焼きどうしよっか?」

「あっ、どら焼き……、どうしようね。自分で買いに行こうかな」

「えっ……、自分で買いに行くの? あ、そうだよね」

「う、うん……、でもやっぱやめた。帰ってくるの待ってるね」

「えっ? そう? あ、いや、我慢しなくても」

「大丈夫、我慢してないから」


 なんだか、悪いことをしてしまった気分だ。

 僕は出張先で見つけた和菓子屋さんでどら焼きを買う。

 どら焼きなんてどこで買っても一緒なのかもしれない。

 でもちょっと気分違ったりするよね。

 仙台で買ったどら焼きは甘さ控えめ。

 和美さんは喜んでくれるかな?

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