15.Phosphorus 【リン】


 こんにちは、わたしは15番!

 どうぞおとりあつかいにはご注意ください。

 ……えっと、かくご、できた?


 白、黒、赤、きいろ、むらさき。

 いろんな色のわたしがいるけど、とくにあぶないのは白のわたし。どのくらいあぶないかっていうと、もうどくなの。それからねー、すぐに燃えちゃうの。もうどくのまま燃えるのって、本当にあぶないでしょ? いちど高いおんどで燃えあがったら、わたしの火はなかなか消えないんだよ。わかってるはずなのに、いまでもわたし、ときどき燃えろってとばされる。火が点いたらとまらない。どこかの街を、どこかの人たちをわたしはざんこくに燃やしちゃう。


 でもね、わたしのせいじゃないもん。使うのはニンゲンだもん。

 なーんて、ホントはわたし、燃やすことはきらいじゃないんだ。なにもかもたいらになってなにもかも黒こげになって、なにもかもなくなったら、とおくまでよく見えるでしょ。ずっととおくまで見えたら、すごくきもちいいよ。


 そんな白のわたしだけれど、お日さまの光をあびると赤くなるんだ。

 赤くなったら、ひと安心。どくも全然よわくなるし、かってに火をつけたりしない。かってにはつけないけれど、シュッとこすると火がつくよ。うん、赤いわたしはたいていマッチの先にいる。みたことある? ちょっとかわいいわたしだから、どこかでみかけたら手にとってみてね!


 いつでも燃えちゃうわたしだけど、8番とくっつくと性格がかわるんだよ。すごく、とってもやくにたつんだから。えっと、8番とはんのうして、『リン酸塩』になると、ショクブツが育つのにだいじなえいようになるんだって! ね、すごいでしょ? わたしがいなかったら、ショクブツは育たなくなって、ドーブツだってニンゲンだって、おなかがすいて生きていけなくなっちゃうんだから。むかしはほんとうにわたしが足りなくて、どうしたらいいのかわからなかったから、ニンゲンやドーブツが増えすぎると、すぐに食べるものがたりなくなったの。今はわたしを作りだす方法がわかって、世界のニンゲンはどんどんふえてる。でも、増えすぎたらたいへんなのにね。いつかきっと、いろんなものが足りなくなるよ。


 でもいいの、燃やしちゃうのも、増やしちゃうも、どっちもわたし。

 ニンゲンは、増やすわたしとおなじくらい、燃やすわたしのことも好きなんだよね。

 もしかしたら、さいごのさいごには、おなじことになるから、なのかな? ほら、燃やしてもヒトはいないくなるし、増えすぎたらへらすために、けっきょく燃やしちゃうんでしょ?


 ねえ、いつか世界からいきてるものがいなくなったら、16番も、ひどいにおいがすることを気にしなくてよくなるよね。わたし、もっとがんばって燃やしたほうが、いい?

 16番、どう思う?



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