12.Magnesium 【マグネシウム】


 やあ、僕は12番。

 一応アルカリ土類金属のグループに所属してる。とはいっても、すぐ上の4番と僕は、ちょっとグループの定義から外れることも多くて、なんだかふわふわしたグレーゾーンにいることを付け加えておくよ。


 ひとつ前の11番は、僕のことを『金属らしい』と紹介してくれたけど、僕単体では強度がそこまであるわけじゃないんだ。加圧にも弱くて、割れやすいしね。ただし他の金属と混ぜて合金になれば、話は別。とても軽くて加工しやすい僕は、航空機やレーシングカー、自転車のボディみたいな、『軽いこと』が重要な部品を作るのに重宝されている。


 基本的に燃えやすい僕だけど、それは粉末やリボン状になっているときの話で、大きな塊のときの僕は、意外と燃えにくい。なにせ僕は熱を伝えるのがはやいから、熱源が近づいても、すばやくそれを分散させることができる。大きな事故でも起こらない限り、そうそう簡単に燃えだしたりしないから、ひとまず安心して良いと思うよ。

 たとえ僕が主成分でなくても、僕を少しだけ混ぜることで他の金属の性質を大きく向上させることがある。そういう意味でも僕の利用価値はまだまだあるらしくて、研究が続いているみたいだね。


 さて、金属的な話はここまでにして、もう少し生き物寄りの話をしようか。

 僕は金属だけど、動物にも植物にもとても重要な役割を持っている元素だ。肥料の名前に『苦土』ってついているのを、見たことあるかな? ほら、『苦土石灰』とか、ね。あれは僕のことなんだよ。他にも、植物の光合成では、クロロフィルの成分として光を受け止める仕事をしているし、動物の骨や歯を作るのにもひと役買っている。


 そうそう、他の元素にもいえることだと思うけど、僕が多すぎても少なすぎても、生き物は健康でいられない。足りなくなると健康を損ねるだろうし、ダイエットに良いなんて噂を信じて大量摂取したら文字どおり命取りになりこともある。なにごとにも適量って大事だよね。くれぐれも気を付けて。


 とまあ、色々と並べてきたけれど、金属としての僕は次の13番に遠く及ばない。13番はたぶん、全ての金属の中でもトップクラスの利便性を持ってるからね。かといって、自分を卑下しているわけではないからご心配なく。僕に僕の、13番には13番の長所があるということさ。



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