2.Helium 【ヘリウム】


 僭越ながら、二番手を務めさせていただきます。


 並び順も2番なら、軽さも2番、とはいえ軽さに関していえば、1番のあの方との差はそれほどありませんのよ。けれどあの方より私のほうが断然希少なので、コスト的には完敗といえましょう。いえ、それが悪いとは思っておりません。私はあの方のように気短かではありませんし、炎にもまったく興味はございません。飛行船に詰めて浮かべるならば、私のほうが向いているのは間違いないでしょう。なにせ、安全はお金に変えられませんもの。


 とはいえ、1番のことはもちろん尊敬しております。太陽ではあの方の核融合で私が大量に作り出されているのですし、そういう意味では私にとって唯一尊敬すべき相手ではないかしら。正直、他の皆様にはあんまり興味が沸きませんけど、強いて言うなら不活性ガス、つまり10番18番36番54番86番、そして118番あたりの方とは、気が合うような気がしないでもありません。とくに仲が良いというわけではないのです。でも、孤独が好きなものどうし、微妙なシンパシーを感じることがございますの。


 自然の状態ならばまず間違いなく、私は無色無臭、とても安定した気体です。

 そのせいで、発見されるのも遅うございました。ニンゲンが私に気付いたきっかけは、日食でしたのよ。つまり、地上ではなく、天文学者によって発見された元素ということになりますわね。何を言っているのか理解できないでしょうが、ご心配には及びませんわ。太陽光スペクトルなんて、普通の生活をおくっている方々にはほとんど関係ありませんもの。


 最後にもうひとつだけ、私としては不本意な使われ方に言及しておきましょう。

 私を吸いこんでアヒルのような声を出すのは、ほどほどにしておいたほうが良いと思います。いくら私が罪のない気体とはいえ、肺に必要な8番の余地を奪っては窒息してしまうことになりかねませんから。

 どうぞ皆様、私を吸い込むときはくれぐれもお気を付けて、相応の覚悟を持ってくださいませ。とはいっても、パーティグッズとして売られている私には、浮気者の例の8番が混合されていますから、過度に心配することもございません。ともあれ、注意書きをよくお読みになって、慎重に使ったほうがよろしいと存じます。


 それでは、なんだか眠くなってまいりましたので、次の方にバトンを渡そうと思います。

 3番目のあの子は少しばかり変わり者ですが、働き者であることは間違いありません。ええ、それはこの私が保証致します。


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