第5話 エルシェンド

荒川南は少し間を開けてから話し出した。

「このゲーム『ゼロムス』は、今や貴方様のような圧倒的プレイングを持つプレイヤーが盛り上げているのが恥ずかしいかな現状です。課金装備に頼らず勝てないはずの敵を倒すプレイヤーの方々には、正直困っている面と、ユーザー増加の意味で感謝している面があります。そこで、優良プレイヤーの皆さんに課金装備を配布しPRして頂けたらなと思っている次第です。今回はジャバウォックに挑まれるとの事なので、アスラさんには、闇属性最強の剣『エルシェンド』をアスラさんにお渡ししたいなと思っております。もちろん金銭的な報酬も成功報酬として200万用意しております。」

 俺は200万という高額に胸踊らせると同時にPRがどういう事をするものかわからなかったし、人見知り故に突然の事に相手を疑う事を忘れていた。なので疑問に思った事だけが口をついてでた。

「PR活動とは具体的には何をすれば良いですか?」

表情1つ変えずに荒川南は言った。

「エルシェンドを使ってジャバウォックに勝ってください。それだけです。勝利しましたら後日の正午にこちらに伺います。その時に200万の送金手続きを行います。エルシェンドに関してはこの件を承諾して頂けましたらアスラさんのアイテムボックスにすぐに送らさせて頂きます。で、いかがでしょうか?」

推しの営業が凄すぎて俺は気づいたら首を縦に振り「やります。」と発していた。俺は推しに弱いようだ。他者に慣れていないのもあるだろう。

まぁ、メリットばかりだし問題は無さそうだ。

 俺が受諾して10秒も経たないのにアイテムボックスに物品到着の通知が鳴った。

恐る恐る開けるとそこには、エルシェンドと思われる深紫に輝く刀身を黒く半透明なクリスタル覆っている異様な剣があった。それは攻略サイトにも載っていないものであった。

荒川南は、扉のノブに手を掛け振り向く事なく「それは、まだ未発表の課金武器になります。発表は、ジャバウォック戦後になりますので、それまでは他言無用でお願い致します。では、健闘をお祈りしています。」と言い静かに去っていった。

 これが後に世界中を巻き込む事になるなどアスラは、翔は、知る由もなかった。

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