第25話 やっぱり妹は最強だ。

ボールが弧を描きゴールに入る、その瞬間を見ながら俺はボールを放った人物の方を向く。


「すげぇな。いつの間にこんなに上手くなったんだ?」


そう言いながら水無月の頭を撫でた。


「フフン!こんなのドってことないよお兄ちゃん!」


水無月は自分を誇るように腰に両手をあてて笑った。


「ちょっと!水無月だけずるいんですけど!?私は、私は!?」


皐月が間に割り込むと俺の手を無理やり自分の頭にのせた。


「いや、だってお前なにもしてないじゃん?」


手を引き俺はコートに戻った。その際点数ボードを見ると26-25と此方が一点差をつけていた。


「ほんとすげぇ~な。俺の予想だとギリギリ俺らの方が負けてたんだけど、と言うか俺の方が足手まといになるなんてな。」


攻撃の際は全て水無月が決め、守備の際はほぼ全て俺のマークしてる先輩からゴールを決められている。


「いや~、それにしてもすごいですね。田村先輩と名城先輩が加わったのに点差がなんとか伏見チームが一点差をつけて勝ってるなんて。」


一空さんがマイクを持ち実況と共に此方を見てきた。


「ああ、しかし伏見チームは何故彼処まで妹一人にやらせてるんだ?」


「さぁ、何故でしょう。でもその妹のおかげで一点差をつけられてるわけですし、伏見チームの今のベストがこの攻めかたなのではないでしょうか?」


一空さん、それは少し違うな。別に今のベストがこの攻めかたと言う訳じゃない。何回かだけど俺や皐月がフリーの場面があった。


「ねぇ?お兄ちゃん。そろそろ私一人で攻めるのがきつくなってきた。」


「ああ、知ってるよ。ずっとお前一人で走ってたからな。」


「じゃ、じゃあさ!そろそろ私がやっても良い?」


皐月が水無月を見ながら期待の眼差しを送っていた。


「………はぁ~。負けたら元もこもないか。しょうがない、今回は良いよ。ただし!」


そこで一旦言葉をやめ、一呼吸おいてからまた水無月は話始めた。


「向こうのエースを潰すこと。」


「余裕だよ!やった、これで思う存分遊べる!」


はしゃぎながらコートに戻っていく皐月を見ながら俺は呆気にとられていた。


「お前たちは俺よりもとんでもないとこ言うな。エースを潰すって木島を潰すって事だぞ?できんのかよ?」


「お兄ちゃんてさ?私達のバスケの試合って最後に見たのっていつだっけ?」


「中学1年の時の練習試合の時だったかな?」


「それじゃ、知らないのも当然か……。」


水無月は一瞬ニコッと笑うと話を続けた。


「安心してくれて良いよ。少なくとも皐月はバスケに関しては信頼して良いよ……私以上にね。」


妹のその言葉にはどこか、言葉には表せないような心境が隠されているような気がした。


「さ、お兄ちゃん!まずは一本止めるよ。」


水無月は俺の方を叩くと走っていった。ただ、何故か俺はその言葉に反応できなかった。


水無月がどこか…空元気のような気がしたから。

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