第9話 決別、それは……。

「食べた、食べた!いや~流石お兄ちゃん!今日もご飯美味しかったよ!」


「それりゃ、良かったな。」


俺達はご飯を食い終わってから少しの間雑談していた。


「あ!もうこんな時間か、そろそろ帰るね。」


「おう。そうか。じゃあな。」


「ちょっと待った~!お兄ちゃん送っててあげなよ!もう夜遅いんだから!」


送ってけって……。


「こいつの家は隣なんだぞ。」


「これだから!いいから送ってく!わかった!」


くっ!面倒くさい!


「いいよ。大丈夫だって、本当に家は隣だから!」


「いえ!お兄ちゃんに送ってて貰ってください!」


俺の事は無視ですか、そうなんですね。


「はぁ~。しょうがねーな。送ってくよ。」


「え!?あ、じゃあお願いしようかな。」


妹達がニヤニヤとこっちを見てくるんですが……。


そう言えばこいつ一人暮らしだったけか?


じゃあ……。


「あ、そうだ。ちょっと玄関で待っててくれ。」


「え、うん。わかった。」


俺は一度台所に戻ってから玄関に向かった。


……………………………………………………


「ありがとね。ここまで送ってくれて。」


「ふん!感謝しろよ!この俺が送ってやったんだから。」


清水は笑った。


「貴方らしいわね。じゃあね、また明日。」


「あ、そうだ。これやるよ。」


俺は手に持っていた物を清水に渡した。


「何これ?」


「今日のカレーの残りだよ。お前一人暮らし何だろうじゃあ朝飯あんまり食ってないんじゃないかと思ってな。」


自慢げな顔をしてやった。


「あ、ありがとう。後でお皿ちゃんと返すから。」


「おう。じゃあな、おやすみ。」


そう言うと俺は清水と別れた。


……………………………………………………


「いや~昨日はホントにありがとね!」


何故だ?何故なんだ!?何でこいつが居るんだよ。


「カレー美味しかったよ。」


俺は学校に登校して最初に会ったのが清水だった。


「あ!ちょっと用事が出来たから行くわ。」


清水から逃げるため俺は駆け足でその場を去ろうとした。


「はは!逃がすわけないじゃん。」


案の定清水はついてきた。


「何処に行こうとしてるの?」


何で付いてくるんだよ。


「自販機に行くんだよ!付いてくんな。」


「自販機でなに買うの?」


だから無視すんな!それにその反応はおかしいだろ。


「お前はおバカさんかな?自販機て何かわかる?飲み物を買う機械だよ。」


その瞬間、清水の拳が俺の腹を抉った。


「え?なんだって?よくキコエナカッタ!」


「何でもないです。」


こいつ最近西ノ宮先生に似てきてないか?


俺達は自販機についてからお金を取りだし入れようとした時に誰かとぶつかった。


「ご、ごめんね!ちょっと急いでて。」


「え?あ、大丈夫だ。」


ん?こいつは……。


「大鳥さん?」


「え?何で僕の名前を?」


来たーーー!!!来ましたよコレ!この僕っ子がいいんですよね!


「ちょっとなにキモい顔してんのよ。」


ちょっと失礼じゃない!?俺がどんな顔しようが勝手だろうが。


「あ、あれ?清水さん?」


「えっと、その、ひ、久しぶりだね。大鳥くん。」


こいつも大概キョドりかたがキモいな。


「あ、ああ!こっちの男はね、伏見くんて、言うんだよ。」


こっちの男ってもっとまともな答え方は無かったのか?


「伏見井就だ。よろしく。」


「あ、僕の名前は大鳥栞奈です。よろしく。」


はぁ!やっぱり可愛いな!


「あ、ごめん、急いでるから先に飲み物を買っていいかな。」


「あ、ああ!もちろんだ。」


俺は大鳥に自販機をあけわたした。


しかし、何か飲み物の数が多くないか?


「なぁ、大鳥ひとつ聞いてもいいか?」


「え?何かな?」


大鳥が顔を少し傾けてこちらを見てきた。


やめて、惚れちゃうから。可愛いから。


「そんなに飲み物を買ってどうするんだ?」


「あ、ちょっとね、頼まれたから。」


頼まれたからか……。


「それってさ、あの山寺達に頼まれたのか?」


「そうだよ。僕はあの人達のパシリだからね。」


大鳥は笑って答えた。


「それでいいのか?パシリで恥ずかしくないのか?」


少し声のトーンを下げて大鳥に聞いてみた。


横では清水が「ちょっとあんた聞くのをやめなさいよ!」と、言ってきていた。


「そんなの嫌に決まってるじゃないか。」


「じゃあ何でやるんだ?」


大鳥は一旦飲み物を買うのをやめて答えてきた。


「君に何を言ったて無駄だけど……。しょうがないだよ。僕は一空さんに歯向かえないから子供の時からそうだったようにね。」


「歯向かえないから、じゃなくて、怖いから何も出来ないし、やらない、努力をしようとしないんだろ?」


嫌みを込めて言ってしまった。


「君に僕の一体何がわかるの!?僕だってあんな惨めな思いしたくない!だけどね!僕がこういう思いをしなければ家が家族が大変なんだよ!」


「じゃあ一生そうしてればいい。負け犬のままずっとな。だけど!もし!お前がその気になれば変えられる。今の状況もな。」


そう言うと俺は一人教室へと歩きだした。


大鳥にはあんなこと言ったが。もう我慢の限界だ。


俺は一人でも今の状況を変えて見せる。


この腐りきった高校生の王国をな。


さぁ、始めようか。最低で、陰湿で、卑怯な鬼畜ゲームを……。


そうして俺は不適な笑みを浮かべた。

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