第4話「S級NPCランホーの襲来」

「私達も早く逃げましょうよ」


「お、おう。そうだな」


 とその瞬間、後方から大きな炸裂音が鳴り響いた。


「ぐあああああ」


 大の男がうめき声を上げながら俺達のすぐ側に吹き飛んできた。


「ひっ」


 慌てて爆破音の先を見つめる。


「おいおい、なんだありゃあ

 映画のランホーをモチーフにしているのならちょっとでかすぎだろ」


「グオオオオ、ココデハオレガ、ホウリツダアア」


 そこには、

 上半身裸。

 筋骨隆々。

 そして3メートルを優に越える男が

 多数の武器を携え、吠えていた。


「だめです……。私はここで終わりです……」


「おい、諦めるな、全力で逃げ……」


「グオオオオ」


 ランホーは吠えながらこちらへ突っ込んでくる。


「って速ええええ」


 ランホーは驚異的脚力で5メートル先まで迫った。

 その瞬間ナイフを取り出したのが見えた。


「危ない!」

「きゃふん!」


 ギリギリの所でサハポンを突き飛ばした。

 その反動で柚木もランホーのナイフを回避する。


「あぶねえ……。ってサハポン気絶してる!?」


 勢いで数メートル先まで突っ込んだランホーがこちらを振り替える。


「さて、これはさすがにやばいな」


 しかし、その瞬間思わぬ援護射撃がランホーへ降り注いだ。


 プシュンッ。プシュンッ。プシュンッ。


「グオオオオ…………」


 (この音……サプレッサー付きのスナイパーライフル……!)


「いいぞ、さすがにこれならランホーも撃ってきている場所が分からず何もできない! ヒャッハー! やっちまえ!!」


 プシュンッ。プシュンッ。プシュンッ。


 連続的に弾丸がランホーを襲っている間にサハポンを担いで物陰へ隠れる。


 (さて、この物陰からランホーの死に様でも覗きますか……)

 (あいつ、どんだけ弾くらったら死ぬんだよ)

 (損害受けてるの体に埋まっている水晶がひとつ割れただけじゃねえか)


 ……ってん? ランホーが銃を担ぎ出したぞ。


 (いや……。お前の持っている銃全部マシンガンだろ!)

 (場所も分からないし、分かったところで当たるわけないだろ…)


 ドドド!


 ランホーは


 たった三発だけマシンガンを打ち放った。



 そして、その後スナイパーライフルの弾が飛んでくることはなかった。


 (おいおいおいおい、嘘だろ! さすがに俺でもその距離マシンガンは無理だぞ)



 さて、どうする。


 相手は超耐久、とんでもない索敵力と射撃スキル。

 そして超越した機動力。


 これがS級か……。


 しかし、右肩だけ埋め込まれた水晶が割れている。

 頭、両肩、心臓部、両足首に付いている水晶、あれが弱点か…?


 いや、違った時も想定しなければ……。


 と、色々思案していたときだった。


「んあー? ここどこですかー? あ、地に堕とされたんだった……」


「ばか、いきなりしゃべんな!!!」


 その音に反応して、


 ランホーはギロリとこちらを向いて突撃してきた。


「ああ、もうママよ……!」


 バンッバンッバンッバンッバンッ


 俺は祈る気持ちで素早くハンドガンを5連射した。狙うは奴の残った水晶。


「グオオオ!!!」


「くっそ、一発はじきやがった! 銃弾をナイフではじくなんてチートだろ!」


 4つの水晶の破壊に成功するも心臓部を狙った銃弾だけは弾かれてしまった。


 くそ……リロード……!


 しかし……ランホーの脚力の方が一歩勝る。


 瓦礫の物陰から撃っていた柚木だったが体当たりでその瓦礫を破壊する。


「ぐあああ!!!」


 柚木は瓦礫ごと吹っ飛ぶ。


「イヤアアア!」


 ランホーの方を振り返るとサハポンが胸倉を掴まれていた。


「助けてください! 柚木さん……!」


 そしてランホーはサハポンを盾に銃を構えだした。


「あいつ、サハポンを盾に心臓を……! サハポンごと撃つか……!?」


「えええ! やめてくださいよこの鬼畜!」


 やばい、絶体絶命……。ってそうだあいつにはあれがあるじゃないか。


「サハポン! 光れー!」


「わ、分かりました! えいっ!」


 サハポンが光った瞬間、ランホーは引き金を引いた。


 その引き金を引く指の動きに合わせ柚木は前方へ目を庇いながら飛ぶ。



 間一髪柚木は弾丸を交わす。

 そして至近距離で無駄に眩しいサハポンの光を受けたランホーは


「グオオオオ!!!!」


「効いてる……!今だ……!」


 柚木は素早くハンドガンをリロードしサハポンの手にハンドガンを投げた。


「ほら、サハポン受け取れ! そして心臓を打ち抜くんだ!」


「了解、隊長!」


 サハポンはハンドガンをキャッチし心臓部目掛けて引き金を躊躇なく引いた。


「終わりです! ランホーさん!!」


 バンッと乾いた音が鳴り響く。


 ランホーの最後の一つの水晶が弾け飛んだとその同時に


 ランホーは消滅した。


「さすがに今回はまじで死ぬかと思った……」


「私って……天才……?」


「いや、お前気絶してただろ」


「でも怯ませたのも、止めを刺したのも、私ですー」


「お前があの時喋り出さなかったらもっと簡単にな……!」


「うるさいですねー。私の功績を認め……って何かランホーさんの消えた後から箱がでてきましたよ」


「うおおおお! 噂のNPCドロップ!」

 

「S級なんだし絶対いい物、入っているんじゃないですか……!?」


「よっしゃあ! 開けるぞ!」


 そして…。そこに入っていたものは……。



「なんだこれ……? 本……?」


「なんて書いてあるんですか? 見てくださいよ!」


「そう急かすなって。なになに……? ゲームクリア、次のゲームへ……?」


 その、瞬間


 柚木とサハポンは違う世界へと瞬間移動していた。


「うわ、ビックリした! って、目の前にいるのは……スライム?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る