#02 事後っていうか、事故

「……事後?」

「んな訳あるかー!」


 目を開くと、別の女がいた。外国人顔ガール。とりあえず、そのことは放っておいてチン〇ンを確認。やはり元気をなくしたそいつを見て、


「やっぱ事後じゃん! 何、が俺の寝こみ襲ったってこと?」

「あんた、あんたってばっ」


 そう、枕元にいたのは同居中の『魔力タンクおっぱい』、ケフィー。部屋は、いかがわしいホテルじゃなくて自宅になっていた。

 とりあえずベットから身体を起こして、部屋に件のJKがいないことを確認。安心。安堵。そして、疑問。


「じゃぁ、何があったんだ。なんで俺のチン……」

「それ以上言ったら、」

「はっ、ケフィーは俺がなんて言うと思ったんだ。言ってみぃ」

「質問に質問で返すわ、コータロー。あんたこそ何て言おうとしたの」

「…………」

「…………」

「…………ごめんなさい」


 ごめんなさい。首ごと視線を下げる。今日のケフィーは。結構ごっそり無いモード。

 また謝ることになりそうなんで目線を上げてから、


「すみませんがケフィー。何があったのか教えていただけませんか。僕チン↑↑は卒業したのでしょうか」


 一番重要なこと。今DTか、否か。二番に、その他もろもろである。 


「……卒業? 何それ。まぁ、とにかくアンタが襲われそうだったから助けた? って感じね」

「何で疑問形なんだ?」


 ケフィーは申し訳なさそうな顔と声で、


「…………ユウが『であいけい』に登録したのは知っているのよね」

「ん、あぁ。今朝電話で確認したしな」

「その、『ぱそこん』ってコータローの情報がいっぱい入ってるじゃない」

「そうだな」

「『めーる』っていうのを確認し放題な訳でして」


 先が読めたけど、黙って話を聞く。


「その『めーる』でコータローのこれからの『ご予定』がわかる訳でして」

「…………」

「端的に申しますと、コータローがその、アレしてる時、ホテルの隣の部屋で『透聴魔法』使ってまして」

「……部屋に戻った時、お前らがいなかった理由が今わかったわ」

「うん、レストランで待ち伏せしていたの、です。……こちらをお納めください」


 ケフィーは、申し訳なさそうな顔でデジカメを両手で渡してきた。使ってなかったんであげたやつ。

 そこからメモリーカードを引っこ抜いて、ノートパソコンに差し込んでイヤホンの左右をケフィーと一個づつ分け合った。


 さっきからそこそこ煩く喋っていたが、決して広くないワンルームには俺とケフィーだけでなく、敷き詰められた布団で眠っている人もいる。

 ユウ、マオ、チャー、オナミ。

 18歳男、18歳?女、18歳女、12歳女、の4人。

 別の言い方だと、『勇者ゆうしゃ』『魔王まおう』『黒縁眼鏡歩く下ネタ』『恥ずかしがり屋人見知りロリ』って感じ。

 ケフィーは、18歳女の『魔力タンクおっぱい』。


 ――とある事情から、俺はこの5人と同居しているのだった。

 今更だけど、彼ら同居人を起こさないようにコソコソとビデオを見始めた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



「お前ら、中々に最低だぞ。レストランまでならまだしも」

「私もどうかと思ったのよ、でもチャーとかが調子に乗って……」


 ビデオをちょい倍速(1.2倍とか)で進めていって、遂にホテルへ向かう俺についていくケフィーたち。


「ここで受付のお婆ちゃんに、多人数でするのは構わないけどって、めっちゃ見られたんだけど」

「でも、お前たちって男はユウ1人で、女はお前含め4人だろ。そう思われても仕方ないっていうか」

「でもでも、だし。だし。そもそも、ユウってたないs……」


 ケフィーの言葉はボソボソとしていて、最後の方は静かな部屋なのに聞き取れなかった。ユウとマオがラブラブ恋人関係なのは知ってるけど。

 ビデオを見ると、画面に映る5人が部屋の壁に耳を押し当てている異様な図で、


「部屋はモチロン隣にしたわよ」

「モロチ、んっいや、気になったんだがラブホの壁って薄いのか。聞こえるもんなのか」

「う~ん、部屋に入ってすぐにユウが私の『魔力』で『透聴魔法』使ったからな。わかんないや」

「そうか……だから、今なのか」

「っ…………」(バシッ


 今朝、ケフィーはので、気になっていたけど、『魔法』を使ったなら納得。理屈も原理も俺は知らんけど、『こうなる』っていう引き金は分かっていた。『魔法』を使うと、ケフィーのある部分は小っちゃくなるのだ。

 ケフィーに叩かれた頬っぺたをさすりながらビデオを見てると、この後が酷かった。

 ビデオは、俺が眠った(多分、JKにレストランとかで睡眠薬を仕込まれたんだろう)後、ケフィーたちが部屋に侵入してくるシーンを映し出す。


****

『ちょっと、部屋に入るってどうなのよ』


 部屋のドアをぶち破ったユウに向けてケフィーが言った。ユウは、腰に引っさげた模擬刀(俺が中学時代に買った2080円,鞘付き)に手を当てるだけで何も答えず、


『大丈夫っすよ、てか、大丈夫じゃなそうだから、突入したんっすよね』


 黒縁メガネを掛けたチャーが代わりに答える。

 そのやり取りの間に、部屋へズカズカと5人は入っていき、一番最後に入った背の低い女の子、オナミは部屋に充満したえっちな空気に充てられたのか、


『おっおなにーしてきましゅっ』

『なっ何言っているのよ、考えて行動しなって言ってるよね』

『そっすよ、ケフィーの言う通り。オナミ、そう言うときは、花の芯を摘まんできますって言うんっすよ』

『……花の芯?』


 オナミは、ケフィーとチャーに呼び止められ足を止めた。


 ――っていうか、画面の隅に眠ってる俺のズボンがずれてモザイク必須のブツが無修正で写ってるんだけど。


****

「映ってるんだけど」

「…………あっその、初めて男の人の見たけど……おっきいのね」


 あぁ、――スキ。

 一瞬、ケフィーに惚れそうになった。一瞬だけど。

 チ〇コ大きいって言われるとうれしいし。


****

 立ち止まって、チャーの言葉を繰り返したオナミにケフィーが、


『全然、隠語になってないよ』


 すると、JKとまともに対峙(周りの3人のせいで緊迫感もくそったれもない)していた残り2人、ユウとマオの内、マオが反応した。


『いんごいんご淫語……えっちな言葉ですね!』


 マオがキラキラ目を光らせての話題に走ったことで、マオの恋人であるユウもJKから目を離し、


『そうだな、マオ。やっぱりケフィーはえっちな子なんだよ』

『何、ユウは本当にマオに甘すぎじゃない。ほんと』


 以下、似たようなやり取りが繰り返され……


***

「結局、お前らは何がしたかったんだ」

「一応、助けたには変わりないんだから許してよね」

「それは、感謝してるけど、何でJK取り逃すかな」


 ビデオは、散々下ネタを放つ5人が賢者タイムのように急に静かになったところ。既にJKは、部屋から消えていた。ビデオを辿っても何時いなくなったのか、分からない。

 ユウは、眠っている俺のズボンを直し、おんぶをしてくれている。今日は、ユウに足を向けて寝ないようにしよう。てか、今日は寝れないかもしれない。ケフィーとムフフな展開とかそういうんじゃなくて、もう朝の5時近くである。

 学校面倒だなと思うと同時、ケフィーは本当に世話焼きな人だな、と思った。本人は気づいていないかもしれないけど、さっきから何度も舟をこぎ、目が垂れ下がってきている。自然と頬が緩む。


 動画プレーヤを閉じる前に、ふと気になったシーンまで巻き戻す。


「どうしたの」

「少し気になったことがあってな」


 ケフィーたち5人がガヤガヤしている時にはすでに、俺のチン〇ンは

 部屋に入ったときには、ケフィーの言った通り

 JKに恐怖を感じながらもビンビンにしちゃう俺なのだ。眠ったからといって直ぐに萎むなんてあり得ない。だったら、萎む別の理由……


 ――これ以上は考えないようにしよう。


 そうは思っても、動画の俺の息子はさっき気づいた時と変わらず、少し赤くなって見えたまま。

 もう事後っていうか、事故じゃん。放送事故とかそういう事故だよきっと。


「ケフィー、寝るのか。もし、起きてるなら飯作るぞ」

「うぅん、眠たいから寝させてもらうわ」


 中学校の修学旅行で泊まった旅館のように、布団が敷き詰められた床に5人が寝ている。これが最近の俺の日常。JKの件がなくても、元々俺の日常はカオスな感じなんだったなぁ、と改めて思いながら、早めの朝食を作り始めた。

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