第24話 第十一幕 インスマスの再興(2)

「ここだ。」


 二人が足を止めたところは、確かに教会だ

った形跡は残っているが廃墟に違いなかった。


「どこからか地下に入れるところがあるはず

なんだけど。」


 探してみると建物の廃墟の中央奥あたりに

地下への階段を発見した。


「降りる?」


 岡本浩太が一応聞いてみた。


「あたりまえでしょ、そのために来たんだか

ら。」 


 意を決して二人は地下と降りて行った。


 洞窟のような地下のトンネルは、ところど

ころ崩れてはいたが通ることはできた。少し

片づけたような跡があるので、誰かが組織的

に調査に来た形跡がある。岡本浩太が綾野祐

介に聞いた話では、綾野がここを訪れた後に

アーカム財団に詳細な調査や深き者どもの処

理を任せた、ということだったので、それだ

ろう。


「アーカム財団が全部調査した後みたいだね、

もう何も残っていないかも知れないな。」


「なによ、それだったら来た意味がないじゃ

ん。知ってたのなら早く言ってよね。」


 浩太としては風間真知子を気晴らしになる

と思って連れてきただけで本当に何かを発見

できるとは元々思っていなかったのだが、彼

女には通用しなかった。


「いや、何か残っているかも知れないし、こ

この現状を確認する、というだけでも重要な

ことだよ。」

 

 半分は負け惜しみで言ってみた。


「私にとってはあまり意味はないわね。で、

どうするの?」


「どうするって?」


「引き返すか、このまま進むのか、ってこと

よ。」


「せっかくここまで来たんだから、行けると

ころまで行ってみるさ。」


 浩太としては綾野たちが見つけた部屋まで

は行ってみたかった。


「なんか、酷い臭い。」


 確かに尋常じゃない臭いが立ち込めてきた。

獣というか生臭い魚臭というか。


「臭いなんてレベルじゃないな。」


 暫らく行くと井戸のようなものがあった。

蓋がなかったので、臭いがそこからしている

のだ。


「ここに深き者どもが居たんだね。アーカム

に回収されて今は何も居ないけど臭いだけは

残っているみたいだ。」


「最悪!まだ行くの?」


「もうちょっとで書庫のような部屋があるは

ずなんだ、そこまでは行きたい。」


「いずれにしても、ここからは離れたいわ。」


 それは浩太も同感だった。人間には耐え難

い臭いだ。


 もう少し進むと二人はドアを見つけた。


「ここかな。」


 入ってみると部屋の三方に書棚が設置され

ている、綾野に聞いた通りの部屋だった。


「ここに間違いないな。何か残ってない?」


「壺はいくつもあるし箱もあるけど中身は何

も入ってないみたいよ。」


「もし中に粉が入っていたら絶対に触ったら

駄目だよ。」


「どうして?」


「綾野先生はその粉を触った所為で右目が無

くなってしまったんだ。」


「そんな大事な事、早く言ってよ。」


「言う前に君があちこち触りだしてしまった

んだよ。」


「危なかったわ。もう何もしないから、あな

たが探しなさい。」


 そう言われても、もう見るところはなさそ

うだった。アーカム財団は粉も含めてすべて

のものを持ち去ってしまったのだろう。


「こんなところまで降りてきていたんだね。」


 それはウィリアム=オーンの声だった。


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