第3話 キマちゃんとお手玉


私が保育園のころ

母がマンション内の付き合いで

生協のグループ購入に参加していた。

グループ購入のリーダー?もちろんキマちゃんママ。


母は、強く誘われると断れないお人好しなところがあり

なにか注文しないと!と毎週注文用紙とにらめっこしていた。

変な物は頼めない。

だってキマちゃんママが各家庭分間違いなく届いてるか

頼みもしないのにチェックしてくれちゃうから。


でも私はプレゼントが届くような気持ちになるから

生協は好きだった。

だからいつも母について届いた商品まとめて運びこまれる

集会場に行っていた。


キマちゃんや他の幼馴染とは親たちがおしゃべりしてる間に

鬼ごっこをしたりして、それなりに楽しかった。




今回の事件の発端は

そんな生協で私が母に買ってもらった「お手玉」。

大切なことなのでもう一度。


「私の」お手玉。



そもそも祖母宅にあるお手玉で、姉と二人でよく遊んでいた。

テレビゲームを禁止されている家だったので

あやとりやお絵かき、手遊びが我が家の遊びの定番。

(トランプはまだちょっと難しい!)

その中でもお手玉は祖母のところにしかない

私達姉妹にとってちょっと特別なおもちゃ。


ハンカチを丸めて縛って

「なんちゃってお手玉」を作るくらい

ハマっていた。


それをみた母がたまたま生協に出ていた

「アニマルお手玉8個セット」を

買ってくれた。


衝撃的だった。

祖母のお手玉は着物の端切れで作られ、中には小豆が入っていた。

正直お世辞にも子供の心を引くビジュアルではなかった。

でもこれは違う。

どれも可愛らしい動物の形になっていて中には細かめの

プラスチックボールが入っていた。

まるでマスコット人形のようで到底お手玉には見えなかった。



姉と届いたらこんな遊びをしよう!

あんな遊びもできるんじゃない?とすっかりお手玉が

連日のトークテーマになっていた。

注文してから届くまで時間がかかる

生協のシステムも

私たちのワクワクを増長させた。


いざ、お手玉到着当日。

姉が幼稚園に行っている間に生協は届く。

私は母と受取りに行き、姉が帰ってくるまでは

開けない約束をしていた。


いつも通り集会所に行くと

2週間待ちに待った「アニマルお手玉8個セット」が!!!

かわいいプラスチックボックスに入っている。


それを手にしているのは



キマちゃん。




今にもボックスを開けようとしている。



…キマちゃんも同じの買ったのかな?

キマちゃんなにも言ってなかったけど。



私はそう思ってキマちゃんに近づいた。

するとキマちゃんは


「みおちゃんのキマちゃんが開けてあげたよ!」


包まれていたであろうビニール袋は無残に床に転がっており

ボックスに2列できちんと並んで入っていたお手玉も

キマちゃんによりぐちゃぐちゃに。。



私は泣いた。



母の表情も強張る。



そこで登場。キマちゃんママ!



この人も強い。

今で言うところの完全なモンスターペアレント。


「キマちゃんが開けたいって言うから開けさせたんです。

どうせ(届いた荷物仕分けの)待ってる間に開けて遊ぶでしょ?

ならうちのキマちゃんが開けてもいいですよね?」



ぶっ飛んでる。

言葉が出ない。



母ここで折れずに頑張る。


「これはみおことさおが2人で開ける約束をしてまして…」


(じわじわ登場人物増えます。私の姉→さおです。)



「でももぉうちのキマちゃんが開けたので

さおちゃんにはキマちゃんに開けてもらったとお伝えください。

さおちゃんは物分かりがいいから大丈夫でしょ」



確かに姉はおとなしい。

でも今はそんなこと問題じゃない。


自分の娘を野放しにし、他人には絶対頭を下げない。



もうお分かりでしょう。

キマちゃんは一日にしてならず。

キマちゃんはこのママによって育てられた。

モンスターキッズなんです。



この話の顛末?

もちろん我が家の泣き寝入りですよ。

母と二人で姉に謝りました。

それはそれは泣きながら。


そして母は数カ月後生協を辞めた。

私はキマちゃんを嫌いになった。


キマちゃんはのちに

「みおちゃんよりもいいものがほしい」

この一心で

「アニマルお手玉12個セット」を買ってもらっていた。


どんな自慢をされたか、想像がつくだろう。

あえて皆さんのご想像にお任せしますね。






キマちゃんは止まらない。

ストッパーもいない。

逃れられないキマちゃんとの日常。


これからも続きます。

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