第2章 九嫁三伏のデッドヒート PART10
10.
「それでは皆様、覚悟を決めて頂く時間がきました。ご準備は整ったでしょうか?」
休憩が終わり、席につくと、パネルが二次投票へと移った。
全員のパネルに0から9までの数字が並んでいる。その最後にはパスのマークがついている。
「では皆さん、投票をお願いします」
投票の覧に男性と書かれてある。全員が瞬間的に数字を打ち込んでいく。きっとすでに決めているのだろう、これなら間違いなくパスはなさそうだ。
続いて女性の投票だ。男性陣とは違い、迷いがあるようにみえる。きっとまだ判別がつかないものもいるのだろう。自分もその内の一人だ。
……どうして七草を選ばなければならない?
零無の方を盗み見るが、彼女には何の表情もない。ここで合図を送れば誰かに見られる危険性がある。
……どうして零無は陸弥ではないのか。
今までの中に七草を選ぶ基準があっただろうか。女性から見ると彼女を選ぶポイントがあるのかもしれない。だが自分の中では陸弥を選ぶしか選択肢はない。
零無が七草を選ぶとして、未確定は6人だ。そのうち二岡が陸弥を選ぶとして5人。この票が運命を分けることになる。
自分が陸弥を選べば、残り二名が陸弥を選べばいい。陸弥に入れそうなのは女性陣だ。先ほど彼女の話に関心を示したのは五十嵐、それに八橋。
大して七草に入れそうな気配はわからない。残りは壱ヶ谷と参浦だが彼らの判断の根拠になるものは何もない。
……どう判断しても陸弥が正しい。なのに彼女の一言で迷い込んでしまう。
思い出せ、彼女達の言葉を。どうして七草を選ばなければならないのかを。
七草は九条に仕えている身、許嫁だ。それでも九条の傍から離れないように客室課マネージャーとして仕事を請け負ってきた。七草が九条に拘る理由は許嫁という所しかわからない。
……情報が足りなさすぎる。俺の勘では陸弥で間違いない。
投票のリミットが迫り、タッチパネルを選んだ後、零無の方を見た。
彼女は表情を変えずに眉を寄せながら画面を凝視していた。
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