第2章 さくら祭りのりんごあめ

―――ピンポーン

...こんな朝早くに...誰。

 「こんな朝早くにごめんね。久しぶりだね。竜輝先輩。」

沙織...亜美...。2年ぶりの再会で、大人っぽくなったね。ぐらいしか言えないけど...

「あのさ、今日これから暇?...さくら祭り行かない??ほ、ほら!前みたいにさっ」

「行くわけ...。行こうかな...。」

いつもの俺なら、断るのに。今日の俺はおかしい...。

とりあえず、金とケータイ持って。...後輩だからな。奢るのが当たり前だよな。

 「悪い。待たせたな。」

 「大丈夫ですよ。先輩。それより、最近は大丈夫?会わなくなってからメールも少なくなって...。何度か倒れたって聞いたよ?」


―――なんでそれを知ってるのかな...。

 「あ、あぁ。大したことないけど。あれから、亜美と沙織は大丈夫だったか..?色々..さ。あ、なんか食べるか? 今日は、奢るよ。」

 「え、いいんですか?なんかすいません...。」

 「じゃ、遠慮なく。」

...あの頃から変わってないな。亜美は遠慮して、沙織は遠慮しつつ甘えて。

 「ねぇ、私りんごあめちゃん食べたいよぉ。」

まただ。また、俺の前に...あいつは。なんでだよ、何で俺だけに見えるんだよ。

...涼香は、死んだはずだろ。

 「ちょ、先輩。顔色悪いじゃん!大丈夫!?お家帰る?」

................大丈夫。それすら声にならなかった。 急いでりんごあめを買うと、人のいない通りで座る。

「ごめんな....。これ、俺の財布。これで好きなの買ってきな。俺は、少ししたら先に帰るよ。」

「大丈夫ですか? まさか、こんなんになるなんて....。誘って申し訳ありません。適当に買ったら私たちも家に向かいます!」

―――何してるんだ俺は。後輩に迷惑かけてしまった。ラブコメ主人公なら炎上してたな。 ...それにしても、りんごあめ買ったのにあいつが居ない。

やっぱり、幻聴、幻覚なのか...?

  「わぁっ!りんごあめっ!りゅう買ってくれたの?! ありがとうっ!」

お、お前っ! 涼香。生きてるのか?

  「りゅう? 私は、死んでないよ?見えてるんだもんっ! 生きてるに決まってるっ!」

はっ......本当かっ!?り、りんごあめ。食べさせてやらないと。

  「な、なぁ! りんごあめ。今、出すか.........ら。」

__カツッン

...確かに、さっき涼香は、居たんだ。


りんごあめの割れるおとが妙に響いていた。


 

____ただいま。


  「先輩。どうしたんですか?」

  「亜美、沙織。早かったね。別にどうもしないよ。」


俺は、隠すように、割れたガラスのようなりんごあめをゴミ箱に捨てた。

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