第2話 侵入者はパパだった!

今日、パパは仕事で帰りが遅いといっていた。こんなに遅くなることは初めて。同居生活をはじめてから帰り時間が少しずつ早くなってきている。


私が食事をしないで待っているから悪くて早く帰るようにしているのだとか。新婚さんはこういういう気分かなと意味深なこといっていたけど。


パパは私のことをどう思っているのかはっきりわからない。父親代わりとして、私のこと可愛いと思ってくれているのは間違いない。だって、洋服を何着も買ってくれたし、ヘヤサロンにも連れて行ってくれた。


髪形が変わった私をジッと見た目は確かに男の人の目だった。それに私がパパと呼んでいいって聞いたときに、一瞬見せた寂しそうな表情、あれは何なの? 私を一人の女性としてみてくれているの?


私は元々パパが好き。初めて会った時から叔父さんというより男性としてみていた。私好みのイケメンだったから。血のつながった叔父と姪は結婚できないけど、全くの他人だからあたりまえかな。


事故があるまでは数えるほどしか会っていないけど、素敵な人と思っていた。だから、東京へ来ないかと言われた時は嬉しかった。


でもパパは私のことを大事にするだけで、指一本触れてこない。私の部屋には絶対に入ってこない、ノックするだけ。


でも湯上りの私を見る目、あれは男の人の目。もし、パパが私を押し倒して、求めてきたら、どうする? 少し抵抗して受け入れる? そんなこと絶対に起こらないと思うけど、受け入れると思う。


そんなこと考えてたら眠ったみたい。夢うつつの中で、部屋のドアが開く気配を感じる。誰かが布団をまくって布団の中に入ってきて私に覆いかぶさる。夢を見ているの? 夢じゃないと分かると、とっさに「ギャー」と奇声を連発してしまった。


でも少し変、覆いかぶさるだけで、何もしない。アルコールの匂いがする。それにこれはパパの匂いだ。酔った勢いで私の部屋に?


布団の中でドタバタしていると、外から玄関ドアをたたく音がする。


隣の住人がマンションの警備会社へ連絡したので、ガードマンが急遽到着し、合鍵を使って部屋に入って、その侵入者を取り押さえた。明るくなるとやっぱりパパだった。その後、パトカーが来るやらで、一騒動。


私は驚くやら恥ずかしいやらで、どうしてよいか分からず、泣き出してしまった。私が泣いたことによってますますパパの立場は悪くなった。


酔って間違って部屋に入ったと言い訳をしているけれど、全く聞いてもらえない。状況からはドメスティックバイオレンスか何かがあったと見られて当然だから。


お巡りさんがきて私に事情を聴くころは、私も状況が呑み込めていたので、パパと私の勘違いを説明できた。私の説明でパパはようやく解放された。酔いはすっかりさめたみたい。


パパは「申し訳ない。酔っていたとはいえ、以前の自分の部屋と間違えたことは、全く迂闊だった。誤解しないでほしい。信じてくれ」と平謝りだった。


私は、鍵をかけ忘れたのは後になって気が付いた、また、始めは本当に不審者が侵入したと思い、パパだと分かってからは、驚くやら恥ずかしいやらで泣いてしまった、こういう間違いも起こると分かったので、これからは必ず鍵をかけると言った。その後、お互いに気まずさを感じながらも疲れて就寝。


次の朝、パパはひどい二日酔いになった。それが分かったので、酔っぱらいは手がかかるといいながら、お粥を作ってあげた。パパは、照れくさそうに「おいしい」といって食べてくれた。


いつもより2時間遅れて、近所を気にしながら二人一緒に出かけた。なんとかお互いに信頼関係を修復できたみたいでほっとした。


でも、泥酔して無意識で私の部屋に侵入したのは、パパの心の片隅にそういう思惑があったのかもしれない。もしそうなら正々堂々ときてほしい。やっぱり無理かな?

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