第16話 イルガード、入団審査1
リーラとイルガード本部に向けて大通りを歩き、朝市が開かれる中央広場まで歩いてきたが、朝市は既に終わり、広場では子供が走り回って遊んでいた。
「ところで、メイルさんは、いま何歳ですか?」
リーラから尋ねられる。
「今20歳だよ。リーラさんは?」
今度は私から尋ねる。
「やっぱり年上でしたか。私は今18歳です。私のことはリーラって呼んでください」
リーラがにっこりと笑いながら話す。
「リーラはイルガードでどんな仕事をしてるの?」
今度は私から質問する。
「私は、普段は受付と事務をしています」
「じゃあ、アマリアさんと同じなんだね」
「メイルさん、アマリア先輩をご存じなんですね」
「昨日フェヴィルと本部に行った時に、入団申請でお世話になったから」
「ああ。なるほど」
そんな話をしていると、イルガード本部が見えてきた。
本部の扉を開けてリーラが入る。
「リーラ。ただいま戻りました!」
「おかえりなさい」
本部に入ると受付に昨日と同じくアマリアの姿があった。
「アマリアさんこんにちは」
「こんにちは。メイルさん」
簡単に挨拶をする。
「ギース班長がお待ちです。リーラ。応接室までメイルさんをお連れして」
アマリアがリーラに指示を出す。
「了解しました! メイルさん行きましょう!」
「はい!」
リーラの元気さがこちらまで移り、私も元気よく返事をする。
受付を抜けた先の通路を歩くとすぐに応接室があった。
コンコン。
応接室の扉をノックしリーラが入る。
私は扉の外で待っておくようにリーラから言われた。
「失礼します。受付のリーラです。メイルさんをお連れしました」
「ご苦労さん。入ってもらってくれ」
「はい。メイルさんどうぞ」
応接室から出てきたリーラと入れ替わり私が入る。
応接室には、扉のある壁と並行に、手前と机を挟んで奥側にソファーが置かれていた。
そして、奥側のソファーに腰かけ何かの書類に目を通している男性が1人。
顔の前に書類を上げて読んでいたので、顔はよく見えなかった。
「失礼します。お待たせしました。メイルです……あっ!」
「今日は突然呼び出してすまなかったね……おっ!」
男性が書類を置き、顔を見合わせると、お互いに驚きの声を上げた。
「君がメイル君だったか!」
「こんにちは。ギース班長って居酒屋のマスターさんだったんですね!」
なんと、ギース班長は、フェヴィルに何度か連れられて行っていた居酒屋のマスターだったのだ。
お互いに自己紹介をしていなかったが、顔はしっかりと覚えていた。
「フェヴィルの紹介だっていうから誰だと思ったら君だったか。まあ座りなさい」
「はい。失礼します」
「まず、結果から言おう。班長審査は合格だ。昨日の模擬試合でも2位だったそうじゃないか。剣の腕が確かなら心強い。君なら問題なくやれるだろう」
「ありがとうございます」
ひとまず第一関門は突破だ。残りは支部長と団長の審査だ。
その後は、他愛もない話で盛り上がり、30分は経っただろうか。
ギースがこのあと予定があるということなので、話を終える。
私はソファーから立ち上がり、扉の方へと歩く。
「今日はありがとうございました」
扉の前で振り返りギースに礼を言う。
「こちらこそ急な呼び出しですまなかったね。このあと支部長が本部に来るから、支部長審査をしてもらって、それで合格なら、そのまま団長に審査をお願いしておくよ。早ければ明日、明後日にでも結果はでるだろう」
ギースは微笑みを見せながら話す。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
こちらも笑顔で返す。
「それでは、一緒に活動できる日を楽しみにしているよ」
「私もです。では失礼します」
応接室からエントランスにある受付に向かう。
受付では、アマリアとリーラが忙しそうに作業をしていた。
リーラが最初に私に気づいた。
「メイルさんお疲れさまでした!」
リーラが声を掛けてくる。
「ありがとう」
「メイルさんお疲れさまです。どうでしたか?」
今度はアマリアが尋ねる。
「無事に班長審査通りました」
「よかったですね」
結果を聞いて、アマリアは笑顔になる。
「ありがとうございます」
アマリアの笑顔につられてこっちも笑顔になる。
アマリアとリーラは、この後にある支部長会議の準備に忙しいらしいので、邪魔をしないように早々に本部を出て帰路につくことにした。
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