第4話

第3章


〔転校生〕



教室に入ると、なんだかみんな、ざわついていた。


憂稀は隣にいた女子に


「ねえ、ねえ、何かあったの?」


「あ、憂稀、おはよう。

実は、今日、アメリカから転校生が来るんだって。しかも2人。」



「転校生? ねえ、清美知ってた?」


「いえ、知らないわ。」


「そのうちの1人は、このクラスらしいよ。」


「男子?女子?」


「ん~、そこまでは、わからないけど…

なんでも、1人は英語のグランド先生の娘さんなんだって。」



「グランド先生の娘…?」


憂稀と友生には、心当たりがあった。


「もしかして…」


2人は目を合わせた


「スーかな?」



チャイムが鳴り、先生が教室に入って来た。


「ほら、みんな席につけ。いつまでも夏休み気分じゃ、ダメだぞ。」



だいたい、夏休み明けに先生が言う、決まり文句を言うと、


「今日から新学期だが、その前に、君達の新しい仲間を紹介する。

イース・グランドさん、入って来なさい。」


彼女が入って来た途端、クラス中に驚愕の声が上がった。


「で、でかい…」

「大きい…」

「なんだ、あれ?」

「まさに、Big American」


彼女の身長が、とりわけ大きかった訳ではない。


ある部分が日本人のそれとはあきらかに違っていた。


そう、胸が超巨乳だった。


清美もスタイルには自信があったが、その自信さえも打ち消されるほどだった。


憂稀に関しては、ポカンと開いた口が閉じない状態だ。


「あれが、あの小さかったスー?」


友生と憂稀は、スーをよく知っていた。


2人が小学6年生の時、英語の臨時教師で、グランドさんが学校に来ていたのである。


その時、日本に興味があったスーも一緒に来日していた。

そして半年間だったが、一緒の学校に通い、クラスメートだった。


しかも、グランドさんが、友生の父親と親友であり、その半年間の間、

友生の家にホームステイしていたのだった。



「ハァーイ、ミナサンコンチハ。

イース・グランド、イイマス。

気軽にスーと呼んでクダサ~イ。」


なんとも軽いノリだ。



「やっぱり、スーだ。」



友生は、周りに気付かれないように、スーに向かって、小さく手を振った。



すると、それに気が付いたスーが、


「オー!トモキ!トモキ!ヒサシブリデース。アイタカッタデース。」


と、友生に駆け寄り抱き着いた。


友生の顔はスーの胸に埋もれて見えなくなった。


「ちょ、ちょっとスー、なにやってんのよ!」


「オー、アナタはユウキチャンデスカ?

ナツカシイデース、オオキクナリマシタネ~」


「スーに言われると、なんだか腹が立つわ…」



友生は、まだ手足をばたつかせていた。


「ちょ、ちょっとスー、友生が死んじゃうって!」


「オー、ソーリー。ゴメンナサイ、トモキ」


やっと友生の顔が見えた。


「プハァ~!ハァハァ…し、死ぬかと思った。」


「ゴメンナサイ、トモキ。ツイウレシ~クテ。」



クラス中の男子の目線が友生に集まった。


「なんだよ、また上地絡みかよ。」


友生に対する視線がますます鋭くなっていった。



「グランドさん?イース・グランドさん?感動の再会は、また後にして席に着いてくれますか?」


先生が呆れるように言った。


「え~っと、グランドさんの席は、1番後ろになるんだけど、グランドさんの目はいいかな?」


スーは、一瞬考えて、思い出したように、


「いいとも~~~!」


右手を高く上げ、元気に答えた。


一瞬の沈黙の後、クラス中からドッと笑い声が起こった。


タモさんは、世界共通みたいだ。




もう1人の転校生は、翔と同じクラスだった。


彼の名前は「レイ・クラウド」

イースとは、まるで正反対で、口数も少なく一見クールに見えるが、

どこか他人を寄せつけない雰囲気を漂わせていた。


レイは挨拶もそこそこに、指定された席に向かった。

その途中、翔をチラッと見て、そのまま席に着いた。



「クラウド=cloud(雲)、か。」


翔はボソッとつぶやいた。





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