第4話魔王を目指す元勇者は、天界に行く。

「何はともあれ、薫様が魔王を目指してくれることになってよかったです」

ユイは、一仕事終わったように、楽しそうに話す。

薫は、「どうやったら魔王になれるんだ?」と聞こうとしたが、魔法で作った防御壁をそろそろ解除したくなってきたため、先に、

「どうすれば、ユイを追ってきている魔物はいなくなるのだろうか?」

と、聞いた。

ユイは、人差し指を、アゴの上に置いて、首をかしげて、

「うぅ〜ん。わからない」

と、可愛らしく言った。

薫は、久しぶりに大量の魔物を相手にし、疲れている。

普段であれば、可愛いと思ってしまう仕草であっても、怒りが込み上がってきた。

薫の右手は、自然に《グー》となる。

それを、理性が、左手に宿り、右手を抑える。

結果は、なんとか薫の理性が勝ったようだ。

「しかし、このまま、魔法の防御壁を作り続けることは出来ない。

どこか移動できないだろうか?

魔界だと、ユイに魔物が襲ってくる。

人間界だと、俺はお尋ね者だ。

そしたら、天界ということになるが……」

薫は、言いながら何かがおかしいと思った。

なぜ助けている側(薫)が、助けられている側(ユイ)に助けを求めなければいけないのだろうかと。

だが、薫にとってユイは、魔王を目指す大事なパートナー。ユイを助けるしかない。

「大丈夫です。私が天界にお連れしましょう」

ユイは得意げに話す。

薫は、誰のせいでこんな自体になっているんだと思いながら、短く、

「頼む」

と、伝える。

ユイはさらに得意げな顔になった。そして、転移魔法を使う準備に入る。

転移魔法を発動させる準備にはいったせいかユイの足元が青色や黄色に光出す。

風が吹き荒れる。

そろそろ、魔法の発動のタイミングかと思った瞬間、風がやみ、光が消えていく。

「ん、んっどうした?」

「すみません。魔力が足りなくて、転移魔法が使えませんでした」

ユイの顔は、テヘっと舌をだし、右手を軽くグーにして頭に乗せ、肩をすくめる。

薫は、イラっとしたが、ここはこらえるところだと思い、右手でユイの左手をつかんだ。

そして、魔力をユイに送る。

「ありがとうございます。薫様。

十分な魔力が集まりました。行きます」

と、ユイが言った瞬間、2人は消えていた。

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