成層圏で燃え上がる流星たちの神話



 外宇宙から飛来する巨大隕石に大地を蹂躙されて、地下に逃れざるをえなくなった人類たち。彼らは生き残りをかけて、地球に迫りくる隕石を迎撃するための戦闘機へ乗り込むためだけに作り出された子供たちを宇宙へ打ち上げる。

 少年少女たち、プラス戦闘機。巨大隕石の高高度迎撃。青い空を失った人類。
 SF的舞台設定が整った物語世界で、まるで神話のような宇宙空中戦が展開される。

 戦闘機ときいてちょっと興奮して読み始め、ま、戦闘機は創造したものと少し違ったのだが、それでも危機に瀕した人類と地球の描写が、終末的であるにも関わらず、透き通るように美しく、独特の形式美を感じさせる。地下都市に押し込められた人類や、戦闘マシーンとしてデザインされた少年少女たちのいびつさ。そんな醜いものたちを、ラジオ放送やノラ猫といった細かい小道具や洒落た描写でオブラートに包みつつ、軽快に語られる前半。

 そして後半、とうとう次の巨大隕石が地球に襲いかかる。

 地下に閉じ込められた人類のうち、戦闘機のパーツとしてつくられた少年少女たちが迎撃のために打ち上げられるのだが、そんな彼らのみが目にすることができる澄んだ空と清涼な宇宙空間は美しい。高高度軌道での命をかけた戦闘。そして成層圏を走る燃える流星たち。

 とにかく空と宇宙の描写が美しい。噴射炎を焚いて踊る戦闘機たち。飛び散るデブリ。火と煙を吹いて空を翔ける流星たち。
 これらの描写が、まるで満天の夜空を埋め尽くす花火と星空の競演のようで、地球の危機も忘れて、ついつい見とれてしまう。そんなお話でした。

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