2.『あまのじゃく』著:琴川 咲音 ジャンル:恋愛(No.015)

 恋愛です。ラブコメでは無くて恋愛です。こういう純粋な(という表現が正しいのかは分かりませんが)恋物語というのは個人的には結構好きです。


 で、批評。まず良いところから。ぶっちゃけ、作品の「良いところ」って、具体的に明文化するのが結構難しいんですが、二つほど。


 まず一つは心理描写。というよりは心理変化というべきでしょうか。


 ジャンルがジャンルなので、当然、キャラクター同士の「恋愛」を描いた作品。その中でポイントになってくるのは、やっぱりキャラクターの心理変化なんですけど、そこが上手く表現できているのではないかと思います。主人公の心持が変わっていく様子が伝わってくるというか。


 もう一つは、キャラクター自体。特にヒロイン。短編、その中でもSF的なギミックを持たない、純粋な現実上にある物語の場合。これが非常に大事。


そういう意味で、ヒロインは魅力的に描かれていたんじゃないかと思います。後、ネタバレになってしまうので余り踏み込んでは書けませんが、終盤の展開を考えても、このキャラクターは良いと思います。


 と、まあここまでが良いところ、少ない様にも見えるかもしれませんが、この二つって出来てないとホントに見劣りするので、そういう意味で言うなら、「屋台骨」は凄くしっかりしている作品だな、と思います。


 その上で、気になった点を二つほど。


 一つは表面的な話で、話を区切ったほうが良いんじゃないだろうかという事。


 と、言うのも本作。二万字弱のお話がだーっと、一つの区切りで書かれています。


 勿論、間違いでは無いです。ただ、この手の「ネット小説」という媒体を考えた場合、ある程度話数で分けたほうがいいかなぁと思います。切り分けられないような話ならばともかく、恐らく分割出来ると思うので。


 後、それに伴って改行、というか、段落変更の頻度をもう少し上げたほうがいいかなぁという感じがしました。


一応段落ごとに改行はしているので、そこは良いんですが、時々だーっと文章が続くなぁって所があるような気がしたので。こっちは本当に自分の感想ですが。


 二つ目は、話の展開。とは言っても、ストーリーの起承転結に問題は有りません。きちんと繋がった、綺麗なシナリオだと思います。


 問題は、その綺麗さ。いや、別に綺麗は綺麗でいいんですけど、余りに綺麗に出来上がっている物だから、最後の方(具体的な表現を避けるならXデー)まで読んだ時に、御子柴が何をしようとしているのかが、ぼんやりと分かってしまったんですよね。


まあ、序盤で分かったとかでは無いので、良いと言えばいいんですけど、元々展開を読む事をしない自分に読まれるというのは若干素直すぎるかなぁと。


 ただ、展開そのものには問題が無いので、具体的にどうするといいか、と言われると自分も悩んでしまうのですが、とにかく「最後の展開」が肝になってきますし、そこを悟らせない為の要素が必要になってくるのかなぁと。その辺り、読者をいい意味で「騙す」みたいな要素が必要かな、と。もしかしたら、自分と近いシナリオメイキングをするから分かるだけ、という可能性もあるので、あまり強く「こうすべき」とは言えないのですが。


 と、まあ色々書いてきましたが、基本的な展開そのものには全く文句が無いです。というかいいと思います。ただ、その展開を「山場」として見せる為の一工夫があると、もっと良くなるんじゃないかなぁと思います。ヒロインの性格が性格なので、どうしても全体的に波風少なく、飄々とした雰囲気にもなってくるので、それをいい意味で打開する動きみたいなものが必要なのかなぁ、と。主人公がもうちょっと焦るとかでしょうか?


 なんだかいつも以上に纏まりが無くてすみません。ただ、言えるのは、話の構造が決して間違っていないという事。だけども、より盛り上がりのある話になり得る着想だという事でしょうか。自分も着想を取り敢えず纏めてみて、「この着想から作り得る限界ラインはここじゃないな」と思って、更に上を探すんですけど、この「着想」には、まだ「更に上」が有りそうな、そんな気がしました。


(作品URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054882258008


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