第6話クリムゾンイータ―

「‥‥‥つまり、クリムゾンイーターですが、簡単に説明すれば能力が使えます、分類は解りませんが」


 ティナとスオウを見て、引きながら説明を簡単にしようと判断したクエン。


「そして、十二カ国連合からゴバに渡り、ゴバでの能力回収が厳しくなったクリムゾンイーターが移動する為に通る道筋で、一番可能性が高かったのが‥‥‥」


「この国境だった、と言うわけじゃよ」

 スオウが話を繋げた。


「何でゴバで回収が厳しくなったわけ?」


ジュディがスオウとクエンに向け聞いた。


「ゴバに居た能力者が、かなり曲者だったみたいですね‥‥‥僕達も一度会いましたが、【クレイジー=クランキー】って二つ名で呼ばれてるサイコな方らしいです」


 鼻頭はながしらきながら、ジュディに答えるクエン。


「一般人を巻き込む事を全く気にしない相手のやり方に、クリムゾンイーターの方がさじを投げて諦めたみたいですね」

 鼻頭はながしらを掻く事を止め、ティナとジュディを見る。


「クリムゾンイーターってのは、良識がある奴な訳?」


 小首こくびを傾かしげながらティナが聞いた。


「んー、そう言う訳じゃ無さそうですが‥‥‥ただ、目立ちたく無いんじゃないですかね?」


 少し悩んで、クエンがティナに答える。


「と、話を戻しますが、それで此処ここで能力者が来ないか見張っていたら‥‥‥」


「私達が来た‥‥‥って事ね、了解」


 取り合えず、納得は出来ないが理解は出来たと伝えるジュディ。


「でも、フューゾルじゃ無くてアルシーナやコルコスタの方に向かう可能性も有るんじゃないのかな?」


 ティナが、ゴバに隣接する二つの国の名前を出して聞いた。


「それは有り得ません‥‥‥だって、アルシーナにもコルコスタにも、能力者やロストチルドレンは一人も居ませんから」


「なんでクエン君にそんな事が解るのかな?」


 ジュディが何かを探る様に聞いた。


「‥‥秘密です」


 ニッコリと笑いながらクエンは言った。


ーーーーー


 二人組の目的が解ったティナとジュディはロゼッタへの説明の為に、スオウとクエンを連れてフューゾルへと戻ってきた。


「‥‥‥で、犯罪者を追うために、バウンティハンターの資格持ちの貴方達がゴバから来てたって事?」


 ロゼッタへの説明の為に若干話を作り、説明した。


「クエン君だっけ、君?」

 ロゼッタがクエンを見て話し掛ける。


「はい、市長さん」

 笑顔で答えるクエン。


「ロゼッタで良いわ、公式の場以外では慣れないのよね市長って呼び名」


 辟易へきえきとした表情でロゼッタはクエンに言う。


「‥‥‥解りました、ロゼッタさん」


「ん、ありがと」

 短く言って、ロゼッタはクエンに話を続ける。


「なんだか苦しい説明だけど、まぁ良いわ‥‥‥それよりもフューゾル領内での犯罪絡みの仕事なら、なるべくこちら側に話を通して欲しいわね」


 真剣な表情で注意をした。


「それは‥‥‥はい、すいません‥‥‥」


 実際は、話を通したくても通せない内々の内容なのだが、説明する訳にもいかず只謝るしかないクエン達。


「まぁ、こちらでも調べてみるから何か解ったらそちらからも情報提供お願いね?」


 クエン達だけでなく、ティナとジュディに対しても言葉を向ける。


「え? ‥‥‥何で私達も見るの?」

 他人事としていたジュディが不思議そうに聞いた。


「全然解決してないからよ、この件が」

 呆気あっけにとられるジュディに無慈悲に言い放つ。


「て、なら依頼料は!?」

 ティナが悲痛な叫びをあげる。


「調査に関する依頼料は払うわよ、只引き続きこの件で新しい依頼を続行してね、勿論断らないわよね?」


 にこやかに黒いオーラを放ちながら言うロゼッタ。


慈悲じひは無いの‥‥‥?」


絶望を背負ったかの様なオーラを放ちながらジュディが問いかけた。


慈悲じひは無い」

 その言葉に項垂うなだれるジュディ。


「まぁ、依頼続行は構わないんですが‥‥‥」

 そんなジュディをスルーしてティナが話を続けた。


「依頼料はこんなところでどう?」

 数字を書いた紙をティナに見せた。


「‥っ! お任せください!」

 ティナは二つ返事で了承した。


「なんじゃか、儂等抜きで話が進んでおるの?」


「‥‥‥一緒に行動するみたいな流れですね‥まぁ、僕等にしたらタダで能力者が二人増えるので願ったりですが‥‥‥」


 クエンが小声で呟き、項垂れるジュディと大喜びのティナを見ながら軽く嘆息する。


「大丈夫なんでしょうか、この二人」

 先行きが不安なクエンであった。


ーーーーー


ロゼッタへの報告と報酬を受け取り、四人は銀龍酒家へと戻ってきた。


「お帰りなさい、お姉ちゃん、ジュディさん‥‥‥と、お客さん?」


 ルーニアが出迎えてくれたが、一緒にいるクエンとスオウを見て首をかしげる。


「ん、ただいまルーニア、この二人はお客さんじゃないよ‥‥‥あれ? 依頼人? 同行者?」


「まあ、同行者辺りで良いと思いますよ?」


 疑問符を浮かべるティナにクエンがフォローをいれた。


「帰ったか二人共‥‥‥ん? なんだその二人は? 客か?」


 店の奥からメイシンが出てきた。


「あ、メイシンさん戻りました、この二人は同行者です」

 ティナがメイシンに答える。


「いや、何の同行者だよ‥‥‥その説明じゃわかんねーから‥‥‥」

 ティナの説明に拍子抜けした表情のメイシン。


「良く解らんが、取り合えず飲みもんでも出してやる、中に入って待ってな」


 メイシンにうながされ店内に入る四人。


「あ、先に家賃払いな」

 無慈悲なメイシンの言葉が響いた。


 店内に入り、複数席で待っていると飲み物を持ったルーニアとメイシンが来た。


「お待たせしました、皆さんカモミールティーです」

 持ってきたカップを並べていく。


「お茶位はおごってやるよ」


 丁寧に配膳はいぜんするルーニアの後ろからメイシンが言った。


「メイシンさんの奢り‥‥‥? ティナちゃん! 何が起きてるの!?」


 先程まで燃え尽きていたジュディがあまりの出来事に復活した。


「お前、普段アタシの事どんな目で見てんだよ‥‥‥」


 煙管キセルから口を放し、苦々しく聞くメイシン。


「スオウさん、この人‥‥‥」

 メイシンを見ながらスオウに耳打ちするクエン。


「ふむ、恐ろしい程の実力者ですな‥‥‥おそらくは‥‥‥」


 メイシンの立ち居振舞いから推測すいそくし、スオウはティーカップで顔を隠しながら、カップ越しにメイシンを見る。


(確か、十二カ国連合の八極星が一人に、メイシン=ウォンなる人物が居たと思うが、さて‥‥‥)


 そんなスオウとクエンの視線に気付いてか、メイシンはジュディにチョップを喰らわせると店の奥へとルーニアを連れて戻って行った。

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