サイノメガールは、満たされないっ!

維嶋津

〇三栗山はわわは、付き合えないっ!

1.

「中村駆人かるとくん! 好きです! わたしと付き合ってくださ」

「ごめん無理」


 フライング気味の拒絶が、わたしの胸に突き刺さる。


 彼はすたすた校舎に戻っていく。

 ちらりとも振り返らず、立ち入り禁止の柵をひょいと越え、ずんずん、どんどん遠ざかってゆく。

 見送るわたしを残して。


 彼の背中の向こうには、南国の海みたいにきれいな青空が広がっている。


 背後で水の吹き出す音がして、うなじがひやりと冷たくなる。

 振り返ると、空っぽの噴水。

 そこには微笑む少女のブロンズ像が立っていて、彼女が捧げ持った壺からこぼれた水が、黒くよごれたタイルを洗っている。


 ここは廃校舎の立ち入り禁止区域にある噴水広場。


 人呼んで、『恋人の泉』。


 一週間に一度、水が噴き出す瞬間に告白したふたりは永遠に結ばれるっていう、そんなジンクスがあるパワースポット。


 ……だった、はずなのに。

 そのはずなのに。


 目の前がにじむ。

 あたたかい水滴が頬を流れる。


 

 わたしの初恋は、たった三秒でおしまいになってしまった――

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