ギリギリマイマイ

長門葵

エピローグ

出会いは突然だった。

親父がいきなり知らない女性を連れてきた。当時、小学三年生の俺にでもわかった。きっと親父の新しい女なんだろうな。

うん。少し言い方が悪いな。

新しい家族になるひとなんだろう。

なるのか?

まあ、いいや。

俺は考えるのやめた。

だってしかたないやん。小学生がどうこういってもどうにもならない。

俺は形だけの礼儀的な挨拶を済ませ、部屋に戻ろうとした。

しかし、親父に肩を捕まれた。びっくりして振り返ると、親父が有無も言わせない笑みを浮かべてこう言った。

「仲良くするんだよ」

その言葉の意味はすぐに姿を現した。

女性の後ろから小学生の俺から見ても小さな女の子が二人ほど顔を見せた。

いやはや、困った困った。

目の前の二人は生まれたての小鹿のように震えていた。そんな二人を見捨てられるほど人間できてないし、親父にも脅迫されたしな。

誰が聞いてるわけでもないのに心のなかで言い訳をする俺。そして、片膝をついて彼女たちの目の前に両手を差し出す。

そして、指をぱちんと鳴らす。

そうするとピンク色のバラがそれぞれの手に。

「よろしく」

いくらなんでもキザすぎた気もするが、覚えたての手品を披露したかったってのもあり、俺はそれを堂々と披露した。

彼女たちは恐る恐るバラを手に取り、小さく

「ありがとう」

と言ったのだ。

これが俺のいきなりの出会いだ。


しかし、出会いがあるなら別れも突然だ。

親父の仕事の都合で転勤することになった。新しい母さんは仕事の都合で動けない。家族会議の結果、俺は新しい母さんとともに地元に。親父には新しい妹二人が。

新たな生活を始めてまだ1ヶ月。

早すぎる別れだ。


出会いと別れを早々に体験した俺の新生活はこうしてはじまったのだった。

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