切り取られた刹那は、多くのことを考えさせる

あまり好きではない表現に、まるで一本の映画を見終えたようだというのがある。そういう風に形容される作品を、あまり私は好まない。
しかし、このすぐれた作品は、そのようにしか表現できない。
主観のみで語られるからこそ、映画のようにとはいかないはずなのに、ありありと情景が目に浮かんでしまうからだ。
なんなら、臭いや滴る汗の感覚すら覚えてしまう。

ロボット──あるいはパワードスーツに乗った主人公が戦闘をする。
筋書だけ見ればありきたりではあるが、その描かれる筆致、挿入される単語、略称、主人公たちの認識、それらが合わさり、無二のロボットものになっている。
いや、探せば似たような作品はあるのだろう。それは私が無知なだけなのだろう。
しかし、ここまで面白いものは、荒涼とした、寂然とした世界が瞼に移る物語は、ほかにないと思う。

類を見ない、ロボットものである。