異世界で賢者の孫として生きる事になりました。

御狐神彼方

魔導師高等級1年生編

第1話 始まりの始まり

「兄さん!早く起きないと遅刻しちゃうよー?」

「わーってる!今行くよ」

俺は寝坊をしてしまい、もうダッシュでチャリンコを漕いでいた。この時の俺は死ぬなんてことを0.1mmも考えていなかった。

「やばい!」

チャリを一漕ぎした時、俺は車にはねられた。いや撥ねられたらしい。

真っ暗だ。なんだここは?

「うー」

「☆※◇◎□○△▽」

は?何言ってんだ、この人。ていうか、俺もなんで喋られないんだ!?しかも、体も動かない!!

俺の前にいたおっさんはミルクを俺の口に運んだ。

「◎△$♪×¥●&%#?」

「うーえー」

おっさんは俺を持ち上げて背中を叩いた。

そしておれは大きなげっぷをした。めちゃめちゃ恥ずかしいんですけど!?

「▲☆=¥!>♂×&◎♯♪£」

よく分かんないけど、俺、転生してしまったらしい。俺は昔の現世でやり残したことなんてなかった。なのにどうしてだろうか。まあ、良いんだけど。

俺的には願ったり叶ったりだ。大抵、こうゆうのはバッドエンドかハッピーエンドだな。まあ、ハッピーエンドを願うとしますか。



俺が転生してから10年が経った。もう俺は10歳。この国では、10歳、15歳、20歳でお祝いがある。成人は15歳で本日俺は2分の1成人式なのだ。

皆もなかったかな?2分の1成人式みたいな?

兎に角、お祝いなのだ。

しばらくして町の方から、歩いてきた大柄の男性が現れた。その人はガング=フルト=リファン。作法やこの世界を教えてくれている前世で言う学校の先生みたいな人だ。爺ちゃんとなにやら親しい関係らしい。

「やあ、ノア。こう考えてみると大きくなったね」

ノアとは俺の名前である。ちなみに俺のフルネームはノア=シュレインゴッツ。この世界の名前であるが、結構気に入っている。

「おはよう!ノア!!」

そう言って駆けあがって来たのは、同い年のリアム=シュリガッザとシャーロット=シュリガッサだった。2人は町からここにきては一緒に遊んでいる。

俺の住んでいる所は山小屋で、結構探険ができるのだ。

「ああ、おはよう」

「ねね、グワム様!ノアと一緒に探険して来ていい?パーティが始まるまで!!」

「いいぞ。でも、絶対に始まる前には帰ってくるのじゃぞ」

「分かってるって!行くぞ、ノア!!」

俺はリアムに手を引かれて走って行った。グアムとは俺の爺ちゃんで、フルネームはグワム=シュレインゴッズ。賢者で名を知られている世界最強の魔導師だ。俺はこの人から魔導を教わっている。

「シャーロットは行かんのかね?」

「私は母に手伝いをしてきなさいと言われたのでここにいます」

「そうか。では、早速頼まれてくれるかい?」

「は、はい」

俺達は森奥まで足を踏み入れていた。今剣を持っていない為、魔導で勝負だ。一応俺はそれなりに出来る方。なはずだ。

にしても、もうお昼過ぎ。そろそろ帰らないとパーティに間に合わないな。

「リアム、どこまで行く気だ?」

「……」

リアムは黙ったままだ。もしかして……。

「お前、まさか道が分からないとかそんなんじゃないだろうな」

「あ、あはは」

はにかみ笑いでリアムは俺を見た。俺は頭を抱えた。

「ったく。馬鹿じゃないのか?もう帰るぞ、探険は終わりだ。俺に掴まれ」

そう言うとリアムは俺に掴まった。そして俺は無詠唱で飛翔フライを出した。

「う、うわっ!!」

「ちゃんと掴まってろよ。最大出力マキシマムアウトプット!」

俺はジェットコースター並みの早さで森を抜けた。

「お前、これは見たことねーぞ!?」

「そりゃ俺が作ったんだ。見たことあったらこえーぞ。…話せる余裕があるんだったら大丈夫だな」

「何がだよ」

「もっと出力を出すって事!!」

そう言うと、俺はもっと早く走った。

俺の家に着くと、リアムは気絶していた。まあ、あんなに早く走ったら当たり前だな。

「時間ぴったりだな」

俺は鼻高々にしてリアムを家のベッドに横にさせた。

「さてと、始めるとするか」

「あれ、リビアとルークさんは?」

「ルークは後から来る。リビア様は…いらっしゃったぞ」

ガングさんは後ろを見た。そこには20代くらいの女性が歩いてきた。

「悪い、遅くなった。もう始まっているのか?」

「いや、まだだ」

リビア=アスコッティ。この世で2番目に強いと言われ、爺ちゃんの1番弟子。俺には姉弟子に当たる人だ。正直、俺はこの人が苦手だ。なんせ、この人は……。

「おお、ノアじゃないか!可愛い顔してるなー!!」

そう言って頬にキスをしようとした。それは全力で跳ね除けた。

こいつは生粋の生意気な少年好きなのだ。俺も反抗している為おもちゃとして使われている。

「止めろ!気持ち悪いぞ!!」

「そう言われるともっとしたくなるんだ!!」

「リビア、止めてやれ」

爺ちゃんがそう言うと、リビアは席に着いた。一応何だかんだ言っても師匠には従うタイプなんだろう。

「じゃ、気を取り直して。ノア、10歳おめでとう!!」

そう言うと、乾杯をした。そして乾杯をしてから数時間するとルークがやって来た。ルークは20代の男で俺の剣の師匠だ。イケメンで、毒舌だが結構俺は好みだ。しかも、王宮騎士でこの世界で1位2位を争うらしい。

「申し訳ない。遅れてしまった」

「いや、今始めた所だからね。はい、ルークの分だよ」

「あ、ありがとうございます」

ルークは俺の隣に座った。

「ノア、おめでとう」

「ありがとうございます!」

そう返事をすると、ルークは腰辺りをガサゴソと動かしていた。

「これ、お前に」

そう渡したのは剣だった。日本刀の様な形をしている。

「この世界では弟子に10歳なったら贈り物をするという風習があるからな」

「あ、ありがとうございます!!これってフォリンの刀ですよね?」

「そうだ。お前に合っていると思ってな」

すると、思い出したかのように爺ちゃんも物を渡した。

「わしからも送り物じゃ。これはな聖なる七精霊の杖ホーリースピリッツと言う杖じゃ」

俺はとても嬉しかった。初めての自分の杖。とてもいい気分だ。

「その、ありがとう!!」

そうして俺は10歳の成人を終えたのだ。

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