とある親子の一日

m-kawa

第2話 桃太郎

『本日、GPSの精度を上げるための衛星が、種子島から打ち上げられます』


 朝起きて、娘が学校に行く準備をしているのを眺めながらご飯を食べていると、ついているテレビからニュースが流れてきた。


「種子島って、桃太郎が鬼退治に行くところだっけ?」


 そんなことを聞いてきたのは妻の美紀だ。

 ……ええと、一体何を勘違いしてるんだろう?

 桃太郎は種子島に行きませんよ?

 僕が心の中で突っ込みを入れていると。


「桃太郎は鬼ヶ島だよ!」


 牛乳をかけたシリアルを頬張っている、小学三年生の娘の美紅みくから鋭いツッコミが飛んできた。


「あっ、鬼ヶ島か! でも、種子島と鬼ヶ島って似てるよね?」


「そうかなぁ……?」


 母さんの言葉に美紅が首をひねっている。まぁ名前だけは似てると思うけど。


「でもきっと、種子島には鬼さんはいないよ?」


「あぁ、うん、そうね。でもほら、種と鬼以外は名前が似てるじゃない?」


 母さんはどうしても種子島と鬼ヶ島が似ていると主張したいようだ。


「ああ! なるほど! うん、そっくりだね!」


 言われて気づいたのか、美紅が満面の笑みを浮かべて「お母さんすごい!」をその表情で語っている。


「ふふ、そうでしょう」


 美紅に納得してもらって嬉しかったのか、母さんも笑顔で答えるのだった。

 今日も我が家は平和なようだ。

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