第4話  ブルッフ:スコットランド幻想曲

 マックス・ブルッフさんは、ブラームスさんともお友達だった大作曲家です。(1838~1920)


 ただし、一般によく知られているのは、誰が何と言おうが(誰も言わないと思いますが)「ヴァイオリン協奏曲第一番」に尽きます。


 この音楽の魅力は、美しくも楽しい旋律、効果的な管弦楽、ヴァイオリンの華やかで美しい技法、そうして聞いていて、もう、うれしくてどうにもしょうがなくなること・・・というような、人気名曲としての条件が、しっかり整っているところにあります。


 ブルッフさんには、しかし「スコットランド幻想曲」という、魔訶不思議な名作があります。音楽のひだの深さ、奥の深さ、神秘的な美しさでは、この曲の方が、まさっている気がいたします。


 この作品には、スコットランド民謡の美しい旋律が使われていると言うことなのですが、この旋律の扱い方が、絶妙と言うか、最高!といいますか、実に素晴らしいのです。スコアを眺めてみると、ブルッフさんが、いかに高度な技術を持っていた作曲家なのか、その一端は、素人にもわかる気がします。


 これは、やっぱり、天才じゃないと、とても書けない種類の音楽だなあ、と思います。

 (ちなみに、山田耕筰さんが、教えを請うたことが知られています。)


 しかし、しかし、ぼくにとって一番大切な事は、この曲が、またこの愚かなぼくを、この世に引き留めてしまう音楽の一つなんです、という事です。

           ♨️


 第一楽章の序奏部自体が、すでに「この世のものならぬ」神秘的な美しさを秘めているけれども、そこから静かに主部に入って、独奏ヴァイオリンが奏でる、なんという高雅で美しいメロディー! すーっと、大きな空を、天使の様に上昇して行くような感動があります。

 第二楽章は、明るく楽しい音楽です。ここはちょっと、中世の女王様とダンスをしているような雰囲気。

          💃


 そうして名高い第三楽章。あまりの美しさに、もう失神してしまいそうな旋律が始まります! これは「ジョニーがいなくて残念よ・・・」という民謡だそうです。ほんとうに、手が付けられないくらい美しい音楽です。

 この曲は、ヴァイオリン協奏曲第一番ほどは、録音が多くはないものの、それでも多彩な演奏家の皆さんが録音してきました。


 その中で、クラシックの演奏家としては、相当異色だった(いまはむしろ主流かも)、ヴァネッサ・メイさんのCDには、彼女が歌うこの民謡が一緒に録音されています。(歌はちょっとだけですが!)ポップに編曲された、お酒を飲みながら聞きたい、魅力的なちょっとハスキーな声の歌です。(お酒は二十歳になってから!)

         🍶


 そうして最終楽章。かなり、しつこいところもあるのが、また魅力的です。おそらく、多分そうなので、むかしハイフェッツさんが少し省いて演奏したのが、慣例として残ったため、その後もカットの入ったバージョンで演奏する方も多かったようです。チョン・キョン・ファさんの名録音も、少しカットがありますが、この録音こそ、ぼくがこの作品に出合ったきっかけとなった名録音です。あまり巷では出会いませんが、オイストラフさんのカットのない録音も、学生時代から大好きでした。(CDは出ています。) 


 最後の最後、独奏ヴァイオリンが、第一楽章の主題を、遠い遠い思い出の様に、静かに回想して、それから、最高にかっこよく曲を閉めます。


 ここで、本当に、聞き手を、どきっとさせられるかどうか、この作品の演奏の大きなカギがあります。ここに至るまでに、技巧とハートの限りを尽くして演奏してきた、ヴァイオリニストさんが、その思いのすべてを、このシンプルな部分にどこまで反映させて聞かせて下さるのか。そこは、この曲を聴くぼくの、大きな楽しみのひとつなのであります。


 全体的には、やはり、大御所ハイフェッツさんの二回目の録音が、カットはあっても素晴らしいです。


 多分お好きだったんじゃないかなあ、と思います。

 晩年TV用に録画したステージでも、指揮もしながら、演奏なさっていました。


 とまあ、この曲を聞いていると、若いころからいろいろな演奏を聞いていたころの事、楽しかった事、などもいっぱい思い出して、頭の中がそこに集中するものですから、あまりよけいな苦しみが感じられなくなってしまう。という、これもまた、ありがたーい、曲の一つです。

           😇


* そうそう、これまたカットはいっぱいあるけれど、カンポーリさんの昔の録音なんかも、なかなか魅力があります。


 比較的最近の、サブリナ・ヴィビアン・ヘップカーさんの録音も、なかなかよかったです。最終楽章の終結部はとっても魅力的でした。

 さらにさらに・・・・あ、でも、もうこのあたりにいたしましょう。


 ・・・グリュミオーさんの録音なんかも、美しい音で、いいです!

 日本人では、諏訪内さんの録音があります・・・。。。

                  あと強制終了いたしました。



 ※ ときに、この曲、ハープも主役なんですが、ちょっとこの項を書いた時期、目が行っておりませんでした。申し訳ないことでありました。




・・・・・・・・うつ 😢・😢 うつ・・・・・・・・・・・・

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