第4話マイトクラスの人々(セックスと編集者と小説家)

「ああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、やっぱり俺には小説家の才能なんてないんだ。なんでこんなに原稿が進まない?俺には最初から小説家なんてならなければよかった。そうだ今から農家に転向して新しいことに挑戦しよう。うん、そうしようそうしよう」独り言をずっと部屋でぶつぶつ言っている乱歩の前に担当の修がコーヒーを持ってきてくれた。


「先生、少し落ち着いてください」

「あああーーーーーーーーーーーーーーーー、修ーーーー。ありがとうありがとう。でもでもでもでもでもでもでもでもでもでも俺にはやっぱり小説家の才能なんてないんだよ。そもそもさっきから拒絶反応しているのか。頭が痛くて痛くて痛くて仕方がないんだよ。助けてくれよ修」

「先生、それはただも風邪ですよ。ほら風邪薬買ってきましたから今から飲んで少し休んでまたやりましょう」そう言って修はコーヒーを回収して乱歩に今度は風邪薬と水を渡した。

「ありがとうありがとう修ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。俺にはやっぱり君がいないとやっていけないよ。そうだ今日結婚しよう。それで俺と一緒に農家をしない?こんなくそったれな仕事なんて今すぐ辞めて一緒に農家をしようよ。今ならおいしいトマトが人気だし。イチゴ農家ならそれなりに収支が取れると思うんだ。だからこんなくそったれな仕事なんて・・・・・・・・・・」

「はいはい、先生いいから薬を飲んでください」そう言って修は乱歩に無理やり薬を飲ましてベットに行かせた。


「ありがとうありがとう修ーーーーーーーーーーーーーーー俺には、グー、グー、グー」乱歩は少ししてすぐに寝てしまった。


修が乱歩の家から出たときにはもう朝になっていた。時刻は朝の5時。この国マイトクラスではどうも夜型の人たちが多いなと思っている。修は駐車場に止めてある車に乗り妻にメールを送った。

「今から帰る」そう書いて修は車を発進させた。修はこのマイトクラスの国が大嫌いだった。国全体がまるでワンダーランドみたいにすべてが遊園地みたいな幻想的な建物ばかりだった。そして朝から晩まで街の光は24時間お祭りがあるみたいについていて寝れるものではなかった。車も買い替える前はほんとに質素なものだったのに買い替えたらそれはどこかのへんてこなデザインがたくさん入った絵に、中はどれがハンドルでどれがサイドブレーキなのかもわからないほどごちゃごちゃしていた。

「はあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」そんな事を言っていても仕方がないと思いながら私は車の中で大きなため息をついていた。


もともと修はマイトクラスの国民ではなかった。彼の故郷はソクラテスだったのである。だが、ある事情からこの国マイトクラスに妻と一緒に行くことになった。

そして、もともと知的労働のために今現在小説家である乱歩先生の編集の仕事を任せられている。だが、彼の性格にはほんとに参っていた。あんなに感情の波がある人など私の故郷にはいなかった。いや、そもそもこの国の人々はあまりにも感情の波が激しすぎないか?


修には趣味がない。それはソクラテスの国の人々ならば当たり前なのだが、この国、マイトクラスの人たちはほんとに多趣味だった。ありとあらゆるところに娯楽施設がある。温泉、ゲーセン、風俗、クラブ、カラオケ、ゴルフ、スポーツ観戦、映画、ショッピングセンター、遊園地などありとあらゆるところに娯楽施設ばかりである。乱歩先生のところから出てくるときも近所にはカラオケセンターとバッティングセンターがあった。乱歩先生はそこの常連であり、よくカラオケのランキングで先生が上位に入っていた。あー見えて先生は歌がうまいらしい。


「ただいま」私が家に着いたら妻は映画を見ていた。

「また夜更かし?」

「あ、おかえりなさい!見てみてこの映画主演の人がこの町の人みたいよ!すごいわよねえ。こんな近くに映画の主演さんがいるなんて。あなたも見てみる?」

「いいよ。とりあえず寝る」そう言って修はそのまま寝室に入った。

妻と出会ったのはここマイトクラスだった。ソクラテスから来た時に右も左もわからず、仕事ばかりの日々から休日をどう過ごせばよいかわからない。そんなときにたまたま映画館で受付をしていた妻とあった。私の一目ぼれだった。その日から私の趣味は映画になっていった。


いや、どちらかといえば彼女に夢中だったのかもしれない。だが、私には恋人など作ったことなどなかったのでどうすればよいのかわからなかった。


「そんなの、アタックですよーーーーー。アタックチャンス。人生当たって砕けろですよーーー」乱歩先生のアドバイスに頼るつもりはなかったが、2か月も3か月も何も成果が出ないのはきつい。私はそれから思い切って好きです!といった。

「いいわよ。私も修さんのこと前から好きだったの」私はその言葉を聞いたときに翼が生えたように、空に飛べるような感覚だった。その日から1年後私たちは結婚した。


・・・・・・・最初は毎日のようにセックスもした。

「もっと、もっと触って」

「ここかい?ここがいいの?」

「そう、そこよ!もっともっと」私と妻はシックスナインをするのが大好きだった。それはやはりお互い攻めあいができるからであった。

「射れてもいい?」彼女は私のビンビンになったペニスを口から出して、そのまま彼女のヴァギナに入れた。


「もっと!もっと!もっと!もっと!ついてツイテついてツイテついてツイテ」彼女は腰を自分で振りながらペニスを自分から出し入れしていた。

「イクー、イクー。イッチャうーーーーーー」彼女の体も彼女の喘ぎ声も私には大好物だった。

私たちはお互いセックスが大好きで毎日2回以上はしていた。


それも結局は最初だけだった。ある日からセックスをする日が1日に1回。それから2日に1回。最後にはセックスレスにまでなった。今となっては妻はセックスよりも映画に夢中になっていた。

今となっては妻の体は最初のころよりもずっとずっと丸くなっていた。結婚してから5年。こっちへ来てから8年。私も36歳。ずいぶんと老け込んだなとベットの中で思った。私は最初こそこのマイトクラスの国が大嫌いだった。だが、妻と出会ってからはこの国が大好きになっていた。だが、妻とセックスレス、そして距離ができるようになってからまたこの国が嫌いになってきた。私は所詮仕事人間なのかもしれない。


「この映画ほんとにおもしろいわーーーーー。明日お隣さんにも教えないと」とまた独り言を言っていた。


ほんとに昔の妻と今の妻は別人なのではないのか?そう考えているうちに私は夢の中に入った。


「修さん、それは仕方ないですよ。僕だって昔奥さんがいましたけど、それは年を取れば誰だってセックスばかりしません。ましてや女性はほかのことをしたいのではないんじゃあーーーーーないですか」昨日風邪をひいていたとは思えないほど乱歩先生は今日は元気だった。ほんとにこの人は感情の波が激しいとしか言いようがない。

「何が言いたいんですか先生?」

「用はね修さん。奥さんは子供がほしいんですよ子供がね」子供・・・それは私からしたら完全に未知の領域だった。

「子供ってそれならばなぜ妻と私はセックスレス何ですか?」

「それはわからないです。ですけどそろそろ修さんも家族を作る時が来たのではないですか。私は妻とはうまくいきませんでしたが、修さんならうまくいきますよ」そう言ってまた乱歩先生は机に向かって原稿を書いていった。


子供、か。そうだよな。もうすぐ俺も家庭を持つときが来たのかもしれない。妻もきっとそう思っているのかもしれない。私はまた乱歩先生のアドバイスを聞いて、今度は本屋に帰りによって子育ての本を早速買いにいった。子育ての本は早すぎるのかもしれないが、まあ、早いに越したことはない。私はそんな自分の家庭を想像しているとまたこの国が好きになってきた。私もまたこのマイトクラスの住人になってきたのか、最近感情の波が激しくなってきたのかもしれない。


私が家に帰ると玄関に見たこともない男性用の靴があった。嫌な予感がした。






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