第3話 知りたい事

4人で初めてお昼を食べた日から1週間が経った。講義も始まり、皆忙しい日々を過ごしていた。講義が終わってから、凛はカフェNASKにいた。そこで、面接を受けている。実は、入学式の日にここのバイトを応募していたのだ。なぜこれほど早くバイトをするのか。それには理由があった。

〜4年前〜

凛が14歳の時、学校から自宅に帰ると、家の玄関で、落胆した男性とすれ違った。凛の家の一階は両親の経営する探偵事務所だ。こんなに落胆した依頼者を見るのは初めてだった。すれ違った時、男性が凛に話しかけた。

「川瀬探偵のお子さんですか?」

「そうですけど。」

すると、男性は1枚の写真と紙を凛に渡した。

「ご両親にこれを渡してください。やっぱり川瀬さんしか頼れる人がいないと言っていたとご両親にお伝えください。」

そう言い残し、去っていった。その時の背中は本当に寂しそうだった。

家で、凛は父親に写真と紙を渡す。

「これ、どうしたんだ?」

「おじさんが渡してくれって。やっぱり川瀬さんしか頼れる人がいないってさ。依頼断ったの?」

「まあな。」

「なんで?今まで依頼を断ってる所見た事ないけど。」

「そんな事ないよ。父さんと母さんも依頼を断る事だってある。」

そこへ、凛の母がお茶を淹れて現れた。だが、その写真を見た瞬間、凛の母は持っていたお茶を落とした。

「その写真どうしたの?」

「預かったの。お母さん知ってる人なの?」

「え、ううん。知らない。」

「ともかく、写真はお父さん達が預かっておくよ。もう部屋に行って宿題しなさい。」

「分かった。」

なにか、おかしい。なにか、ある。誰だってそう思うだろう。もちろん凛もそう思った。だが、親には聞けなかった。

しばらくしてから、凛は新聞の記事で写真の男性を偶然見つけた。そこで、その男性の名前と職業を知った。

“カフェNASK社長 結城 内士”

それから親にNASKに行きたいと凛は言ってみた。だが、凛の両親は何かと理由をつけて行こうとしなかった。

〜〜

つまり、凛はNASKの社長と凛の両親の関係が知りたいのだ。一刻も早く。

1週間後、面接の結果が来た。結果は採用。キッチンで働く事になった。こうして凛は、知りたい事に一歩近づいた、はずである。

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