第44話
1234!
―ぶっ飛ばッせぶっ飛ばせ!
―ぶっ飛ばッせぶっ飛ばせ!
スタスタスタスタ、スタスタスタスタというメチャクチャ早い2ビートに乗せてDの音を「ぶっ飛ばせ」と同じリズムのユニゾンで刻む。「ぶっ飛ばせ」を16回繰り返すと曲はスッタンスッタンというリズムに切り替わり、ギターのオクターブ奏法のリフがなめらかに曲をつなぐ。そしておれと理子はそのスネアの音に合わせて
―ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!
と力の限り叫ぶ。
そして一旦ブレイクしたあと、ベースとドラムだけのブリッジをはさんで後半のツーバスドコドコのパワーメタルパートへとなだれこむ。理子はひたすら16分音符の単音リフをシューゲイザーバンドのギタリストのように下を向き、髪を振り乱して一心に弾き続ける。小さな体なのに、抑えきれないパワーが溢れ出しているようだ。
俺は俺でずうっと全身鳥肌が立っている。しかしそれは演奏の快感からくるものだ。
―アー果てしなくーこわし続けろぉー!
―ボコボコにしろォ!
そのまま勢いだけのアホフレーズを絶叫し、ダンダン!ダダッダダダンダン!と曲を終わらせる。
おれたちはそれと同時におおーと声を上げ、満面の笑みを浮かべた。とにかく音の響きが素晴らしかった。バンドが一体となって演奏しているとき、おれはいつも自分が自分でなくなる気がする。それはバンドのグルーヴや音のうねりが俺の魂を揺さぶり、アドレナリンが溢れ出すことによって一種の恍惚状態を作るからなんだろう。しかしそれは滅多にあることじゃない。よほどの調子がいい時に限られている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます