夜咄 ヨバナシ

龍宮真一

第1夜

 暗闇が怖い、そんな人に朗報です。

 これを知れば、暗闇が全く怖くなくなります!

 そう言って、胡散臭い笑顔を振りまいてる変なおっさんが駅前に居る。

 もうかれこれ、1週間になるか。

 誰かが話を聞いてるところなんて1度も見たことないけど、よく続けられるな。

 そもそも、自分だって何を言ってるのかしっかりと聞いたことがないから、内容までは知らないで居る。

 とりあえず、暗闇が怖くなくなる、ということらしいけど。

 最近、どうにも1人で部屋にいることが怖くて仕方ない。

 理由は分かってる。夜中にいきなりテレビがついたり、パソコンが起動したり、風呂のシャワーが出始めたりするからだ。

 明らかにおかしい。

 100歩譲ってテレビとパソコンはタイマーとか誤作動とか考えられるけど、手で物理的に蛇口をひねらないと水が出るわけがないシャワーが勝手に出るなんて、どう考えても普通じゃなかった。

 だから、普段なら耳を傾けることがないはずの、こんな胡散臭い話を、聞いてしまいたくなるのだ。

 皆さんの怖がる暗闇!

 なぜ怖いのでしょう?

 理由は単純明快です!

 それが自分に対して、意志を持って害を成そうとしているかも知れないと考えるからです!

 では、なぜそう考えるのでしょう?

 それは







 何見てるんだ?



 今まで向こうで話してた男の、

 貼り付けられたような笑顔が、

 目の前に、

 あった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る