02-2.ガラス越しに困っている事:会話を「深読み」し過ぎる

動作IQと反対に、「異常」と指摘される程に跳ね上がっている言語IQ。これが高い人間は頭が良く、弁が立つ・・・と01で解説した。

だが、高すぎるIQは想像を絶する弊害をもたらしている。特に私の場合、近日主治医に書いていただいた診断書の特記事項として、こんな記述がある。


「対人場面での文脈把握が困難」


確かに言語IQの高さは言葉の認知能力・読解能力・表現力が高い。「即興力」がある動作IQがある程度の数値に達していれば、スムーズで知的な会話、ユーモアがあり、相手も自分も楽しめる会話が成立するだろう。

私のように言語IQと動作IQの数値差が開きすぎている人間には、この高さすら「人生のお荷物」だ。


一例を出してみよう。

夫婦で暮らし、ある程度生活に安定性があったとしても、やはり金銭面で一時的に困難に陥る事はある。ちょっとした節約や賞与でほとんどが回復するものだが、銀行の口座残高がマイナスになるのは、誰もが気分のいいものではないはずだ。

だが、どうしても必要なもの、というのはあるだろう。食料品や日用品の他にも、女性特有のものとして「基礎化粧品」が挙げられる。

夫はその辺りについてはかなり寛容だ。決して「今お金がないんだから100均のものにしろ」とは口が裂けても言わない。それは、やはりある一定の年齢に達してからは、それなりの値段のものが必要になってくるというのを、夫自身がよく理解し「直接身体に塗るものに金を惜しむな」という女性陣からすると涙が出るほど有難い考え方が根底にあるからだ。

事実、これは自分が美容関連のライターをしている関係もあるが、100均の化粧水と3000円の化粧水では、その成分や効果、肌を美しく保つ維持力は雲泥の差になる。

基礎化粧品が切れたからと言って、ここで黙って100均やら1000円やらの化粧水を買ったら夫の説教が待っている事請け合い。

怒られるぐらいならキチンと確認を取ろう、と私はこう聞く。

「こんな時なんだけど・・・化粧品、切れちゃったんだよね。買ってもいい?」

夫は特に何の気なしに返した。

「それはしょうがないよね。お金は無いけどさ」


はい、もう一度行間を開けて書きます。


「それはしょうがないよね。お金は無いけどさ」


ここで私が瞬時に判断した「文脈把握」を晒してみよう。

「それはしょうがないよね」

しょうがない=仕方がない。

仕方がない=自分の本意ではないが渋々「買うしかないんじゃない」と思っている

自分の本意ではない=本当は買って欲しくない


ファイナルアンサー=【本当は買って欲しくない】


「お金は無い」

お金はない=事実として現在口座はマイナス。

現在口座はマイナス=本当に化粧品は「生きる上で」必要なのかを暗示している?

「けどさ」=生きる上で必要ではないけど、買いたいんだろ?これで拒否したら経済DVとかになるんだろ、の意訳?


ファイナルアンサー=【お前がそういうからすげー嫌だけど買えばいいだろう】


2つのファイナルアンサーを組み合わせた最終脳内判断

『夫は本当はそんな無駄な金を使う余裕なんかないと思っているけど、欲しいっていてるし、後々で揉めるのも面倒だから買えばいいじゃんと思っているんだ!』


「もういい、買わないよ」

「何でだよ、必要なんだろ?」

「別にいいもん、無くたって死なないし、自分で生活費稼いでる訳じゃないから買わない」

「は?しょうがないから買えって言ってるんだぞ?」

「だから、しょうがないとか思うんだったら買わないし500円のとかでもいいし」

「???????」


という問答を延々と繰り返している訳だ。

うわめんどくさ、と思うかもしれないが、言語IQだけが異常に飛び出ている、というのはこういう事となる。マジで一事が万事これを繰り返している。

私にとって「気楽な会話」というのはあまり存在しない。必ず文面を自分の辞書なりデータベースなりから引っ張りだして、余計な解釈まで付け加えて判断する。

発達障害や自閉スペクトラム障害を持っている方で「一人じゃないと耐えられない」と感じている方は、割とこんな側面からのような気もするのだ。

一人でいれば、誰の何の会話も気にする必要がなく、好きな事を好きなだけやっていられる。

会話というコミュニケーションがかみ合わな過ぎて、放棄してしまうのでは ないだろうか。

本人の意思や考え方を予め理解しているつもりでも(この場合、夫の考えとしては【化粧品はしっかりとしたものを買うべきだ】という思考を前もって知っていながらも)その場になるとそれがまるっと吹っ飛んでただただ「その場の文脈と文面」でしか判断できなくなる。

動作IQとの数値差が大きい発達障害や自閉スペクトラム障害の大きすぎる問題点だ。


今でも夫婦間で模索は続いている。ただ、どちらかというと、夫が割と理解し、何となく手助けをしてくれているウェイトがかなり大きい。

私も理解をしたいとしっかり考えを聞くのだが、何度聞いても「その場」になると全部ぶっ飛んでしまうこの脳の器質障害だ。

ある程度の「諦め」と「妥協」、「お願い」は必要だよな、と痛感してきている。

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